資材制作と切り離せない「転載許諾」の基本の「き」_デジぽちLab

医療系の資材制作では、様々な研究グループのデータをご紹介するケースが多いかと思います。
弊社が得意とする動画制作では、「動画」という特殊性から転載許諾の判断に迷われ、ご相談をいただくということがよくあります。

本記事ではM3DCのメディカルライターが、資材制作における転載許諾の基本的な考え方について解説します。

著作物を守る『著作権』

『著作権』と聞いて、小説や絵画、音楽を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、医療系資材制作で頻繁に紹介する学術論文も対象となります。

もう少し詳しく説明すると、著作権法では、著作物を「思想又は感情を」「創作的に」「表現したもの」で、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。

文化庁の表現を引用すると、『著作権』で守られる著作物であるためには下記の事項をすべて満たす必要があります。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること→ 単なるデータが除かれます。
(2)思想又は感情を「表現したもの」であること→ アイデア等が除かれます。
(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。
(4)「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するものであること→ 工業製品等が除かれます。

出典:「著作物について」(文化庁)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu.html
(2022年2月3日に利用)

『引用』は著作物の例外的な利用

基本的に著作権法は、著作物の権利を守るものではあるものの、一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています。

それが『引用』です。

(著作権法32条)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。


適切な引用をするために、著作物の出所と著作者名の明示が必要(著作権法48条1項1号、2項)であるため出典を記載します。

適切な引用をするための、その他の要件についてご紹介します。

<著作物の引用の要件>
・既に公表された著作物であること
・引用する「必然性」があること
・引用部分とそれ以外の部分が明瞭に区分されていること
・引用部分とそれ以外の部分の関係性が「主従関係」があること
(引用部分が「従」、それ以外の部分が「主」)
・出所を明示すること

簡単にまとめると著作物を引用する場合の要件は上記のようになりますが、実はこれらの要件以外にも著作物の著作者人格権である以下にも留意する必要があります。

公表権(著作者が未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利)
氏名表示権(著作物に著作者名を付すかどうか、付す場合に名義をどうするかを決定する権利)
同一性保持権(著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利)

また、著作者の名誉又は羨望を害することの無いように著作物を利用をする必要もあります。

『引用』は例外的に認められている著作物の利用であるからこそ、確認しなければならない点が多数あります。

引用の範囲を超えると『転載』になる

他人の著作物を引用して掲載する場合は『引用の範囲』であれば著作者に許諾を得ることなく利用をすることができますが、『引用の範囲』を超えて他人の著作物を掲載する場合は『転載』となるため著作者に利用の許諾を得る必要があります。

『引用の範囲』について判断する際に、前述の「①自分の意見と引用する部分で主従関係となっていること」の要件について、特に動画の場合は時間という要素があるため、判断が難しいと感じられ弊社のメディカルライターにご相談をいただくことがあります。

そのような際に弊社では、基本的に動画であっても、静止画であっても図表の利用は転載許諾の申請をお勧めしています。

数値データは著作物なのか?

資材を制作する場合、試験結果をグラフ等に表した数値データを転載利用することもであることが多く、「数値データは著作物なのか?」と疑問に持たれる方もおられるのではないでしょうか?

数値データそのものは著作権の要件を満たさないことが多く、考え方については厚生労働省のホームページに掲載されているコンテンツの扱いについての記載が参考になります。

また、数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象ではありませんので、これらについては本利用ルールの適用はなく、自由に利用できます。

出典:「利用規約・リンク・著作権等」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/chosakuken/index.html
(2022年1月17日に利用)

しかし、多くのデータは数値“そのもの”であることは少ないこと、また著作権を保有している出版社や学会側から許諾を取得するように求めているのが実態です。

例えば、ある学会では、すべての転載はまず申請が必要という前提で”営利目的・商業的利用の判定は学会側が行います”と明示されています。

後で問題とならないために、まずは使用可能であるか確認をしてみることをお勧めしています。

資材制作についてぜひご相談ください

実際の転載許諾手続きでは、許諾まで時間を要することが多いので、早い段階で担当者様とご相談をさせていただいております。

予算について目安がございましたらご共有ください。
また、訴求したい内容を踏まえてのデータの取捨選択や提案をさせていただくことも可能です。

弊社の特徴として、メディカルライターが原稿を担当し、シームレスに制作チームと連携します。
そして、資材制作と切っても切り離せない転載許諾の手続きを代行し、資材の審査完了まで並走させていただきます。

 

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M3DCメディカルライターチーム

コンテンツ制作における文献調査や原稿執筆、学術チェックなどを行う。本サイトでは製薬業界や医薬品関連情報、その他お役立ち情報を発信。