AI(Artificial Intelligence:人工知能)は近年急速に進歩した技術であり、既に社会の多くの場面で活用されるようになっています。それは医療においても例外ではなく、診断・治療への活用や、創薬・治験の支援など、さまざまな研究・開発が進んでいます。
本記事ではM3DCのメディカルライターがその知見を活かし、医療機器におけるAI導入の今とこれからについてまとめました。明日からの会話のきっかけにご活用ください。
AI(人工知能)の定義
AIと一口にいってもその定義は幅広く、さまざまな技術が内包されています。
現在国内で承認された医療機器で活用されているのは、「機械学習(Machine Learning)」「深層学習(Deep Learning)」と呼ばれる技術です。
ともにメディアで頻繁に名前を聞くようになった技術ではありますが、両者の違いをご存知でしょうか。
機械学習とは
機械学習とは、入力されたデータからコンピューターに一定の計算方法に基づいてパターンやルールを発見させる技術です。
そのパターンやルールを使うことで、別のデータに対する識別や予測につなげます。
深層学習とは
機械学習の手法の一つが深層学習であり、人間の神経回路をモデルにしたネットワークを用いることで、入力データに対する、より高度な分析が可能になります。
例えば、従来の手法では、パターンやルールを発見する上で着目すべき点を人が設定する必要があったのに対し、深層学習ではコンピューターがそれを自ら抽出することができるようになるなど、より高度な分析ができるようになります。
画像診断支援機器への導入が進む
よく知られている機械学習・深層学習の用途として、コンピューターによる画像認識が挙げられます。大量の画像データをコンピューターに入力してパターンやルールを構築させ、それをもとに別の画像を分析するというものです。
医療機器においても同様の用途が先行しています。
2021年11月現在、AIを活用した製品として国内で承認されているのは画像診断を支援するソフトウェアで、2019年に発売された内視鏡画像診断支援ソフトをはじめとし、頭部MRA検査、肺CT検査の診断支援ソフトと、複数の種類が次々と承認・発売されています。
いずれも機器単独でスクリーニングや確定診断ができるわけではなく、あくまで医師の診断の補助にとどまりますが、非専門医や臨床経験の浅い医師にとっても診断の助けとなることが期待できます。例えば、一部の機器の臨床試験結果には、非専門医や研修医が使用した際の成績も含まれています。
データの蓄積により性能変更も可能
機械学習・深層学習は、データを蓄積することで、分析の精度のさらなる向上が期待できます。
であれば、それを活用している医療機器についても、販売後に収集したデータで継続的に性能が変更できるシステムにすることも可能と言えます。
かつては、そのような販売後の性能変更には再度の審査を要するために、迅速な対応が困難でしたが、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)」(2020年9月施行)により、医療機器等変更計画確認手続制度が創設されており、事前に医療機器の変更計画を提出することで、市販後の変更がその範囲内であれば、変更に係る承認申請は不要になりました。
医薬品開発や介護など他分野での活用も
今回は医療機器に限定してまとめましたが、他にもさまざまな分野でのAIの活用が見込まれています。
今後、登場が見込まれる技術を知るための参考の一つになるのが、厚生労働省が開催している「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」で取りまとめた、AIの活用に向けた工程表です。
工程表で挙げられている内容はさまざまです。今回紹介した診断支援も含まれているほか、AIによる医薬品開発の支援や、介護に活用するための生活リズム予測、手術データの統合収集・蓄積など、さまざまな工程が挙げられています。
AIは今後、質の高い医療・介護サービスや医薬品、医療機器等の実現にますます貢献していくことでしょう。
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