近年はデジタルを活用したテレヘルスの浸透が医療機関で進んでいます。加えてソーシャルネットワークを活用した大規模グローバル・コミュニティによる治験や臨床研究なども活発化しています。
大量の情報やデータを利活用する時代に医療業界やヘルスケア産業はどこを目指すのか。ITテクノロジーで最先端を走るシリコンバレーから製薬ビジネスの最新事情をリポートします。
本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2020年10月より公開している動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。 ▶ 動画版のご視聴はこちら(無料) ▶ デジぽち最新の動画はこちら |
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米国大統領選で医療政策はどうなる?
沼田 様(以下、敬称略) 最後のテーマなんですが、やはり今アメリカと言うと大統領選ということなります。
大統領選で気になるのは選挙の結果どうこうということではなくて、むしろアメリカの中での医療保険制度、オバマケアはどうなっていくのかなというのは我々の関心事でもあります。
西村さんの目から現地で見ていてどうですか?大統領選の影響や今後について何か見えてくるものはありますでしょうか?
日米で見え方の異なるオバマケア
西村 様(以下、敬称略) はい、あの医療とのからみで言うと、オバマ大統領が当選した時の選挙も・・・もちろんあの時はで経済的にひどかったので不況対策ありましたけど、医療をどうするかというのはかなり大きなテーマだったと思うんです。
そのままオバマケアをひっくり返すぞと言って当選されたのがトランプ大統領なので、トランプ大統領の当選した時の選挙戦もやはり医療がテーマでした。
今回もコロナの問題もありますし、医療政策がやはり大きなテーマになっている。そういう意味ではアメリカにとってGDPの20%に迫らんとする医療の問題なので、医療は非常に大きなテーマになっています。
オバマケアという名前がついたままで今でもオバマケアと言われてるんですが、オバマ大統領がやった無保険者対策の政策については「どうなの、あれうまくいかなかったんじゃないの」って時々日本の方から聞くんですけれども、オバマケアは実は大変うまく機能しております。
今回コロナで失業者がすごく出たんですね。1929年の大恐慌の後の30年代の失業率を記録的に塗り替えたと言われているぐらい高い失業率を記録してまして。デイオフだったりするんですけども3,000万人ぐらい職がなくなった。
その職がなくなった方は、オバマケアがない時代はCOBRAと言って3ヶ月から6ヶ月ぐらい元の職場の医療保険を、自分でアウトポケットで保険料さえ払えば継続することができるという以外にほとんどが救済策がなかったんです。でもこれも職場の負担分がないのでものすごく高くなる。
西村 あとは自己破産してしまうと、メディケードという本当に貧困層に対する医療給付措置があるんです。そこに行くかどっちかで、その中間的な所の方は保険を持つことができなかったんですけれども、今回の失業された方たちに対してオバマケアの取れた対策というのは、若年層で26歳未満だと親御さんが持っている保険に扶養家族として入ることができるという措置を、リーマンの後の不況の時に打ち出された政策です。
そのまま今も続いているので26歳未満の若年層は親御さんが医療保険を持っていれば入ることができる。
それからオバマケアという名前で呼ばれている連邦政府と州政府が乗り合いで所管している、日本で言うと国民健康保険に近いんですが、中小零細企業や自営業の方が入るような保険を、オバマが作ってたのでそれがオバマケアと呼ばれています。
そこに失業者ももちろん個人の資格で加入することができるというので、この二つを合わせて大体失業者の80%ぐらいは理論上カバーされるはずだと。これはカイザーファミリー財団というところの試算で出ている数値ですけども。
ですから実はオバマケアは機能してるんですね。ところがトランプ大統領はこれに反対して当選されたので、そのことはほとんど言及しないという問題がありましてあまり知られていないんですが、実は無保険者がたくさん出ないで済んでいる。そのバックボーンはオバマケアでそれがいまだに継続している。
ただ残念なことにお金がなかったりして、あるいは州知事が異常に強硬な共和党支持支持で「オバマケアは一切州としては協力をしないよ」と言っているような州がいくつかありまして、南の方と・・・フロリダなんかはその先頭ですけれども。
そういうところは連邦政府が直接に医療保険を変えるオンラインのサイトをその市民向けに開いて救済措置をとっていたんですが、そういう直轄で治療運営されている州が、残念ながらトランプ政権になってから連邦の補助措置をほとんどもらえないという形で、そこの州では失業者の方の救済の率が低くなっているという問題があります。
ただすごくアイロニカルなんですけども。例えばフロリダ州って反対の戦法なんです。で実際に共和党の知事が当選しているぐらいで州民の方も共和党支持者が多いんですけれども、実はそのフロリダ州が全米で一番たくさんオバマケアに加入しておられるような事実があって、この問題がほとんど知られていないというのがアメリカのある意味ではちょっとした悲劇ではないかなという風に思います。
オバマケアに関する違憲立法審査も米国医療保険に大きな影響を与える可能性も
西村 で、これからどうなるかって話ですけれども、非常に強硬に反対をされている方達が「オバマケアは違憲である」っていう違憲立法審査を最高裁に提出していまして、それがヒアリングが中断されたままになっています。
これは秋に再開されることになっていて、多分大統領選の前までには決着がつかないと思うんですが、何を争っているかというとオバマケアは保険を買わない・・・何らかの形で保険を買わない場合には逆にある意味ではペナルティに当たるような税金を払うということを課しているんですね。
ですからそれは無保険者になってしまったことで他の方たちの保険料の中から高い無保険者治療費を支出させることになった場合の担保のためのペナルティのためなんですけども、この保険商品は民間の商品であって、民間の通常の消費者グッズを全国民が買わなければいけないという風に強制するのは、これは憲法における経済界が保証する経済活動の自由の侵害であるというのが違憲立法審査の多分単純に言うと争点です。
これが今争われていまして、それが最高裁での判断のためにヒアリングが実施されるのがおそらく来年になるだろうと言われてますが、そこでどういう結果が出るかによってはオバマケアのありようについてかなり見直しが行われる可能性があるというのが裁判の動向もです。
選挙の動向と一緒に保険関係の有識者の方達の最も注目しているところだと思います。
沼田 非常に面白かったですね。オバマケアは機能してるというところはね。
望月 様(以下、敬称略) 機能はしてると思ったんですがフロリダが一番使ってるっての知らなかったです。
沼田 (笑)
望月 そうなんだと思って。
西村 (笑)そうなんです。
沼田 ありがとうございました。本当に貴重なお話をたくさん頂きました。普段日本だとそういうアメリカの生の話を聞く機会ってのがないもんですので。
望月 なかなかねちょっと断片的な情報になりがちなんですよね。トランプさんは薬価に対して厳しいんでしょとかいうイメージはあったとしてもそれぐらいで多分止まってる人が多いと思うので、本当に勉強になりますね。
沼田 そうですね。まだ西川さんには残っていただいて、また最後にお話頂きますが、その前に皆さん番組の感想ですね受け付けておりますので、是非画面の右側のコメント欄から視聴後アンケートのほうを書いていただければなというふうに思います。
沼田 はい。本日いかがだったでしょうか。西村さんありがとうございました。本当に貴重なお話をいただけなので視聴者の人達も非常に参考になったんじゃないかなと思うんですけども。
エンディングなのでね、最後に結構コロナで大変だったと思うんですけども、シリコンバレーで今後秋以降何か面白いトピックスとかあればちょっと聞いちゃおうかなと思うんですけど。
シリコンバレーにGoogleスマートシティ構想?
西村 はい。さっき在宅勤務なのでこの辺りから出て行って他の地域に移られる方も多いとかっていう話もしましたし、失業者が多いとかいう話もしましたが、特にシリコンバレーに限って言うと、私の住んでる町のMountain ViewというところにGoogleの本社があるんですけれども、既に非常に大きなキャンパスなんですが、そこを中心にGoogleが新しいコミュニティを自分たちの会社と関連会社を中心にして作るという話が、決定したこととして出てきまして。今かなり広い敷地を確保にかかっています。
コロナのこの状態が落ち着いたら、非常に大きな日本的に言うとGoogle城下町のようなものが出てくると思うんですが、なにしろGoogleがやることなのでおそらくスマートシティのモデルみたいなのが出てくるんじゃないかと、皆非常に何が起こるのかなという期待して注目しています。
沼田 なるほどぜひ行ってみたいですね。
望月 行ってみたいですね
沼田 コロナがおさまってまた西村さんといっしょに行きたいです(笑)
望月 行きたい、早くいきたい(笑)
沼田 本当に西村さんお疲れ様でした。本当にどうもありがとうございました。
西村 お招きいただいてありがとうございました。今後もよろしくお願いします。
沼田 はい、というわけで今日ずっと放送してきたわけですけれどもね。今回新しい試みとして海外と繋がって、これもテレワークだから成せる技ということで、どうですか?感想を最後に。
望月 いや面白かったですねでも私やっぱりアメリカに行きたいですね(笑)取材に早く行きたいなって思いますが逆に。
沼田 本当にそうですね。やっぱりね、我々も西村さんとね、現地のほうでもお会いしたりしてて僕もナパのワイナリー・・ワインカントリーに連れてってもらったことがあるんですけど、
望月 それ仕事じゃなくて遊びじゃないんですか(笑)
沼田 いやいやそんなことないです。取材で行きましたけどね。是非ね、そういう時が早く来て欲しいなという風に思っておりますし、本当に私もねそれを願っていきたいと思います。
本当に今日は西村さんありがとうございました。是非番組の方ですね皆さま方からの感想も聞きたいなという風に思っておりますので、是非一応アンケートの方を是非宜しくお願い致します。
次回はこれでまた年末になるのかな。いよいよ年末ということで早いものでどんどん過ぎていきますけれども、また新しい企画で進めていきたいというふうに思います。
本当に本日はご視聴いただきましてありがとうございました。
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