コロナ禍における医師の情報取得の実態~Dr.新井と探る!KOLの行動誘因とは?#1~

コロナ禍における”デジタルインフレ”により、多くの方が玉石混淆の情報にさらされています。

一方で、MR活動においては『医師との接触機会を出来る限り減らす』『効率的な面会を心掛ける』といった行動が求められています。

そのため、製薬企業と医師の関わりは限定され「何に困ってるのか?」「どんなニーズがあるのか?」など、肝心の”医師のホンネ”を聞ける機会はそう多くはありません。

今回は横浜市立みなと赤十字病院の新井基洋先生をお招きしてお届けする全3回のシリーズ企画です。 第1回は「コロナ禍における医師の情報取得の実態」。

『医師の印象に残った情報チャネル』のヒアリング結果をもとに、医師の情報取得の実態に迫ります。更に、医師の目線で伝える”MR活動+α”もお伝えします。

本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2021年7月より公開している動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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 出演者 新井 基洋先生 横浜市立みなと赤十字病院 平衡神経科部長
六嶋 一喜 M3DC ソリューションプランナー
斉藤 友紀恵 M3DC カスタマーサクセス

 

医師の情報取得経路の実態は?

斉藤 皆さんこんにちは。製薬・医療業界に特化した情報をお届けする動画サイト『デジぽち』。
本日はシリーズ企画でお送りいたします。今回司会を務めますエムスリーデジタルコミュニケーションズ カスタマーサクセスの斉藤と申します。よろしくお願いいたします。

六嶋 今回コメンテーターとして参加させていただきます、元MRの六嶋と申します。よろしくお願いいたします。

斉藤 それでは、『コロナ禍における医師の情報取得の実態~Dr.新井と探る!KOLの行動誘因とは?』第一回をすすめていきたいと思います。それでは早速、新井先生のご紹介をさせて頂きます。

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斉藤 横浜市立みなと赤十字病院 平衡神経科部長の新井基洋先生は、日本耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会などにご所属されています。また、日本めまい平衡医学会 代議員でいらっしゃいます。2020年から2021年のめまい診療での診療と治療を評価されBest Doctorsに選出されるなど、華やかなご経歴をお持ちです。新井先生、よろしくお願いいたします。

新井 基洋先生(以下敬称略) よろしくお願い申し上げます。

斉藤 それでは、第一回のトピックに参ります。テーマは「医師の情報取得経路の実態」、アジェンダは「1. 医師の情報取得経路の傾向」「2.HP・GP別の面会突破の工夫」です。

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コロナ禍でのMR訪問 GPでは横ばい HPでは3分の2に

斉藤 こちらのスライドはミクスOnlineデータより抜粋した2020年1月から2021年3月におけるGP勤務医の「情報チャネル別印象に残ったDTL数」のグラフです。新井先生、こちらのデータはどう見ていきましょうか。

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新井 是非皆さんに見て欲しいのは、たくさん折れ線グラフがありますが、青い折れ線グラフに注目してください。

緊急事態宣言が去年の4月と5月、今年の1月から3月に発令しましたけども、青い折れ線グラフがMRさんの訪問です。一回目の緊急事態宣言で、グッとMRさんの訪問が減りました。しかし、1か月も経たないうちに回復したんですよ、GPでは。

そして、比較的水準を保ちながら、1月から3月の二回目の緊急事態宣言でもわずかに減少してすぐ元に戻って、コロナ前よりも逆にMRさんの訪問頻度が2%増えたんです。直に合えるんですよ。ですから、オンラインでの面談は当然増えないわけですよね。

斉藤 ありがとうございます。こちらについて六嶋さんはいかがでしょうか。

六嶋 私は昨年の10月までMRをしていたのですが、開業医の先生とはオンライン面談をした事、なかったですね。Webツールを使用してまで面談したくないとおっしゃっておりました。

斉藤 ありがとうございます。それでは次のスライドに参りたいと思います。

先ほどのグラフではGP勤務医はインターネットよりMR経路での情報取得の印象が強いという結果でした。そこで新井先生に、このグラフには現れていないような医師独自の情報網があるのかお伺いしたいと思います。今表示しているスライドは、複数の医師から頂いた医師コミュニティに関するフリーコメントでございます。新井先生、こちらはいかがでしょうか。

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新井 GPはですね、本当は他の医者とコミュニケーションしたいのですが、できないのです。激減しているのです。書いてありますね。所属の医師会から来るメールやFAXで情報収集をするにとどまっているので、逆に言えば、MRさんに会って、生の声が聞きたいということが分かりますね。

斉藤 ありがとうございます。こちらについて六嶋さんはいかがでしょうか。

六嶋 COVID-19の影響で、GPの先生方に訪問した際、「○○先生何してる?」とか「○○先生元気?」と聞かれることが多かったので、先生方同士のコミュニケーションの機会が減っているんだと感じました。そういった意味で、講演会後の懇親会はかなり重要だったんだなと思いました。ちなみに新井先生は、Web講演会視聴後のオンラインでの懇親会などご興味ありますか。

新井 ありますよ。なかなか一緒に会えないのですから、そういうですねウェブ越しかも知れませんけれども、ドクターと会って、コミュニケーション、情報交換したいです。

斉藤 ありがとうございます。続いてのスライドに参ります。こちらもグラフをお示ししております。次は、GP勤務医同様に、HP勤務医の印象に残った情報取得チャネルのグラフを見ていきたいと思います。新井先生、こちらのデータはどう見ていきましょうか。

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新井 これを是非皆さんに見て欲しいです。病院の勤務医は、同じように、緊急事態宣言一回目でがくんとMRさんの訪問頻度が減りました。でも、GPと違って回復が悪く、低空飛行をずっと続けて、二回目の緊急事態宣言ではさらに減ってしまい、MRさんの訪問頻度がなんと33%、つまりコロナ前の2/3に減ってしまいました。

でも、病院に勤務している私から言わせて頂きますと、肌感としては五割減という感じです。ですから、昨年の10月から、オンラインの面談でMRさんと会おう、意見を頂こうという風にしています。

斉藤 33%という数字もかなり大きな減少だと思いますが、体感ではもっと減っている、という言葉を頂きました。六嶋さん、こちらについてはいかがでしょうか。

六嶋 本当にデータ通りだと思います。私も、医局前に立つことができなくなったので、HPの医師と面談するのはかなり苦戦していました。

斉藤 ありがとうございます。続いてのスライドに参ります。こちらは、医師の情報取得経路 Webサイトについてでございます。こちらについては、新井先生いかがでしょうか。

ドクターが欲しい情報と製薬会社が出したい情報の差

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新井 病院にいますと、MRさんに会いたいですけど、会えません。何故でしょう。コロナ禍で、病院に入院した患者さんのご家族でさえ、面会を禁止しています。つまり、部外者は会ってはだめなのです。病院に来ては困るのです。

MRさんは来られませんので、我々は余った時間を、エムスリーさんや日経メディカルなどを見て、多く視聴して勉強するんですが…でもですよ。読みましたり見ますけど、興味がある内容があまりないんです。どちらかというと、コマーシャルの色が強く、「なんだよ…本当に見たい、ピンポイントの内容がないな」というのが医者の意見です。

では雑誌でも見てみようと思い、メルマガを見るのですが、パラパラパラを見ても、うーん…。内容が不十分!すぐにゴミ箱に入ってしまい、申し訳ないと思いますが、それが現状です。

斉藤 耳の痛いコメントを沢山いただいていますが、六嶋さん、いかがでしょうか。

六嶋 本当に耳が痛いです。ただ、最近は製薬会社さんのオウンドサイトもかなり充実しているように思うのですが、新井先生は製薬会社さんのサイトをご覧になることはありますか。

新井 実は、担当のMRさんからよく言われんですよ。「ウェブに登録していただかないと、私の成績が下がってしまします、これも成績の加点ポイントなのです」と良く言われるので、一応義理で入れます。ですが、入れてお終い、実際は見ません。よりコマーシャルの色が強いからです。

六嶋 ご覧になる機会が少ないのでしたら、どういった情報があれば先生方が見に行くようになりますでしょうか。

新井 結局、製薬会社側が見せたいものと我々が見たいものに温度差があるのです。我々が見たいものを研究して欲しいと思います。

オンライン面会 好まないドクターも一定数

斉藤 ありがとうございます。続いて、MR活動についてのご意見でございます。新井先生、こちらはいかがでしょうか。

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新井 病院の医者はMRさんの訪問ができないため、昨年の10月からオンラインの面談が増えてきたことが先程のグラフで読み取れましたね。そうなんです。私もよくZoomを使って面談をしています。ただし、これはですね、全くしないドクターもいるのです。

若いからする、年配だからしない、というわけではありません。年齢を超えて好き嫌いがあるのですが、でもやっぱり年配のドクターは、よりしない傾向が強いのです。

斉藤 六嶋さん、いかがでしょうか。

六嶋 先生、オンライン面談が嫌いで、リアルの面談が禁止の病院の先生は、どうすればよいのでしょうか。

新井 難しいですね。

六嶋 是非、名刺交換も含めた面会方法のテクニックを教えてください。

GP / HPの面会突破の工夫

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新井 そこで、GPとHPの勤務医の攻略法をお話しようと思います。GPは、先程お示した折れ線グラフを覚えていますよね。会いたがっているのです。どうぞ、どんどん行ってください。そうすれば、より良い関係がつくられます。

ただ、HPはそうはいかない。病院の方針ですから。部外者はダメなんですよ。ではどうするか。

一番良いのは、前任者から引継ぎをするときに名刺交換をしましょう。名刺を頂けば、下にアドレスがあります。すぐにお返事をしてください。そのドクターがあなたの顔を覚えているうちに、「今日は面会ありがとうございました」とお返事をすることがポイントです。

もしも引継ぎが上手くできない場合はどうするか。それは仕方ない。引継ぎ出来なかったんですから。医局の秘書を通して、自分の名刺の裏に会いたい理由を書いて、何回も何回も何回も訪問しましょう。10回中9回はボツになってしまいますが、へこたれずに頑張ってください。

斉藤 実際の面会でもWeb面談でもお会いするのが難しい先生は、やはり地道で丁寧に面会の機会を作ることが大切ということですね。

六嶋 面と向かった際、先生方に名刺交換してくださいと言う勇気ないのですが、言っても先生は怒りませんか。

新井 怒りませんよ。ただ、六嶋さん。六ちゃんと呼ばせて頂きますが、六ちゃんだったらビビりもせずに言えばよいと思いますよ。我々は積極的なMRさんを求めています。

六嶋 ありがとうございます。病院に電話する、というのはいかがでしょうか。

新井 皆さんどう思います?実は、昨今は大手の外資も内資も、大きな製薬会社ほど、病院の代表番号に電話してアポイントをとってこい、という会社、それをノルマにしている会社が多いのですよ。意外でしょう。本当なのですが意外です。病院の交換台はそのような部外者からの電話を取り次がないようにと教育を受けていますので、これもかなりハードルが高いですが、地道に頑張ってみてください。

斉藤 ありがとうございます。今回はMR活動にクローズアップし、情報取得の実際のところについて見てきました。新井先生、まとめメッセージをお願いいたします。

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新井 はい。残念ですが皆さんは部外者で、入院されている患者さんのご家族が会えない今、病院は、部外者の皆さま方の受け入れを拒否しています。

直接の面談が難しい今、ウェブを使った面談は必須です。まだウェブを使った面談が十分に出来ていない製薬会社の皆さん、ハイブリッドが常識ですから、しっかり活用していただくようお願いいたします。これが私のメッセージです。

斉藤 新井先生、ありがとうございました。本日はご視聴いただきありがとうございました。次回もお楽しみに。

本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2021年7月より公開している動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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