近年続々と登場している皮膚科領域の新薬。
このなかで注目されている疾患について新薬を中心に3回に分けて取り上げます。
第1回は「アトピー性皮膚炎」です。
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因※1を持つとされています。
幼少期に発症することが多い疾患ですが、大人になってから発症する患者さんも増加しています。
※1 ①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生し易い素因。
発売・承認申請中の新薬
近年発売・適応追加になった薬剤は以下のとおりです。

直近では、レオファーマから「トラロキヌマブ」を承認申請した、というプレスリリースが発表されています。
トラロキヌマブは、IL-13サイトカインを特異的に中和することを目的に開発された、完全ヒトモノクローナル抗体製剤です。
アトピー性皮膚炎治療薬の転換点
2018年にアトピー性皮膚炎の10年ぶりの新薬としてデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が発売されてから、続々と新薬が登場し、この3年の間に6製剤が新発売、あるいは効能追加により使用可能となりました。
デュピクセントは病態に働きかける治療薬の先駆けとなっています。
以降に発売された薬剤の作用機序は様々ですが、いずれも炎症性サイトカインに直接/間接的に働きかける薬剤であり、従来から使用されているステロイド外用薬やプロトピック(一般名:タクロリムス)とは異なるため、デュピクセントの登場はアトピー性皮膚炎治療薬の転換点であったといえます。
デュピクセントと同じく注射薬でモノクローナル抗体製剤であるミチーガが今年(2022年)発売されました。
両薬剤は以下のとおり、作用する受容体や効能・効果などが異なり、同一の位置づけにはなりません。

外用薬であるコレクチム、およびモイゼルトはいずれも1日2回患部に塗布する薬剤です。
両薬剤は作用機序が異なるため、既存の外用薬に加えて新たな選択肢が2つも増えたということになります。
また、内服薬の3剤はいずれもJAK阻害薬で1日1回経口投与となりますが、通常用量から減量可能な薬剤はオルミエント、増量可能な薬剤はリンヴォックとサイバインコです。
加えてJAKの選択性などに違いがあります。
アトピー性皮膚炎疾患の治療は適正使用の情報提供も必要に
2021年12月にアトピー性皮膚炎診療ガイドライン1)が改訂されました。
今回紹介した薬剤のうち、デュピクセント、コレクチム、オルミエントが「アトピー性皮膚炎の診断治療アルゴリズム」に組み込まれました。(データカットオフ2020年12月末)
また、今回ご紹介した外用薬以外の薬剤は最適使用推進ガイドラインの対象品目に指定されており、使用できる施設や患者、投与に際して留意すべき事項などが定められています。
新薬ラッシュにますます目が離せないアトピー性皮膚炎疾患の治療、特に薬剤に関しては適正使用の情報提供が欠かせないものとなっていきそうです。
第2回では「乾癬」の新薬についてご紹介します。
1)日皮会誌:131(13),2691-2777,2021.









.png?width=733&height=412&name=IPC_%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3KV_%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9(%E5%86%8D%E7%94%9F%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%A5%E3%82%8A).png)

.png?width=733&height=412&name=SEM240805(%E6%97%A5%E4%BB%98%E3%81%AA%E3%81%97%E5%86%8D%E7%94%9F%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%A5%E3%82%8A).png)
.png?width=733&height=412&name=PMD%20%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%BE%93%E4%BA%8B%E8%80%85%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A9%9F%E5%99%A8%E5%96%B6%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%B3%E3%83%88(%E5%86%8D%E7%94%9F%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%A5%E3%82%8A).png)