近年続々と登場している皮膚科領域の新薬。
3回シリーズの第2回では「乾癬」を取り上げます。

乾癬とは、皮疹を伴う慢性の皮膚の病気で、自己免疫性疾患の1つとされています。また、乾癬には様々な種類がありますが、うち9割は尋常性乾癬といわれています。
尋常性乾癬の治療は大きく4つ(外用薬、内服薬、注射薬、光線療法)に分けられ、近年では注射薬である生物学的製剤の種類が増えています。
本コラムでは尋常性乾癬治療の中でも特に生物学的製剤に絞ってご紹介します。

尋常性乾癬に対してTNFαを阻害する生物学的製剤が初めて承認されたのは2010年のことです。
それ以降、TNFα阻害薬以外にIL23阻害薬、IL17阻害薬が使用されるようになり、2022年8月現在、生物学的製剤は先発医薬品だけで11製剤が使用可能です。

発売・承認申請中の新薬

近年発売になった薬剤は以下のとおりです。

近年発売された乾癬の薬剤一覧

イルミアはIL23阻害薬の中で唯一自己注射が可能な薬剤です。
IL23阻害薬は一定の投与間隔になると8~12週間隔投与と比較的投与間隔が長い薬剤ですが、IL23阻害薬が有用で症状が安定しており、定期的な通院が難しい患者さんなどには適しているかもしれません。

ビンゼレックスはIL17阻害薬です。
日本人を含む国際第Ⅲ相臨床試験において、プラセボ以外にも生物学的製剤を対照群に設定して検討している薬剤です。
後から発売された薬剤ならではのデータですね。

2021年11月にはブリストル・マイヤーズ スクイブが尋常性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症に対する適応症の取得を目的として、TYK2阻害薬の「デュークラバシチニブ」の製造販売承認を申請したとプレスリリースで発表しています。
国内ではTYK2阻害薬は新規作用機序に該当し、承認されると約5年ぶりの内服薬の新薬になるため、既存の内服薬との有用性の違いが気になるところです。
※チロシンキナーゼ2:ヤヌスキナーゼファミリーの分子のひとつ

尋常性乾癬に使用される生物学的製剤について知っておきたいこと

生物学的製剤は既存治療で効果不十分な場合にのみ適応できます。
また、これらの薬剤は日本皮膚科学会が乾癬生物学的製剤使用承認施設として認可している施設でのみ使用できます。
これは診療される先生方が、疾患要因、治療要因、背景要因を十分に吟味勘案し、生物学的製剤の特徴やリスク、考慮すべき点を熟知し、適正に使用することが必要なためです。

上記のように生物学的製剤は各薬剤の作用機序・投与回数の違い、有効性や安全性の違いなどを十分考慮し、個々の患者さんに適した薬剤選択が求められていますが、種類が増えたことによってその重要性は増しています。
加えて、画期的な薬剤であることから、寛解に達する患者さんも増え、治療のゴールにも変化が訪れているのではないでしょうか。

最終回となる第3回では多汗症を取り上げます。

注)TNFα阻害薬、IL23阻害薬、IL17阻害薬という表現は、詳細な機序の違いを割愛したものです。詳細につきましては各社添付文書等でご確認ください。

 

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M3DCメディカルライターチーム

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