政府が推進する「医療DX」。オンライン資格確認に続き、2023年1月には電子処方箋の運用が開始されます。Pharma Marketing Day 2022 では、デジぽちでお馴染みのミクス編集部と、実務薬学総合研究所の水八寿裕氏をゲストにお迎えし、医療DXの本質を探り、薬局機能の変化や製薬企業のタッチポイントについてディスカッションしました。

本記事は2022年10月5日開催「Pharma Marketing Day 2022 presented byデジぽち」のセミナーセッションを記事にしています。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。
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登壇者
株式会社ミクス
Monthlyミクス編集長 沼田 佳之

株式会社ミクス
ミクス編集部デスク 望月 英梨


株式会社実務薬学総合研究所 代表取締役
学校法人武蔵野大学薬学部 臨床薬学センター 講師 水 八寿裕

 

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【トレンド】製薬マーケティング担当者必見!医療DXとの向き合い方(1/2)

 

製薬マーケティングが考えたい医療DX

セッション後半では、製薬マーケティング担当者にとっての医療DXについて深堀しました。
コロナ禍以降話題となったオンライン診療やオンライン服薬指導の他に、ドローンを使って医薬品を届けることも実証研究が進んでいます。中でも注目されているのが、治験アプリの開発です。

「世間的には『顧客体験』という言い方をされていますが、やはり医療の世界では患者さんをしっかりと体験していく流れになっています。これにより、例えば患者さんの日常生活における課題や、治療上の問題を少し深掘りした形で、介助者や医師、薬剤師など皆さんで共有できるというようになります。このようなバーチャルリアリティーの開発が進んでいます」と沼田氏が解説します。特にPCD、いわゆるバーチャル治験が注目されています。例えば、被験者の方が在宅で治験を受けられるようになります。

「被験者が在宅ですので、当然薬の届け方も変わります。ラストワンマイルと言いますか、そこまで含めてパッケージで治験を受けられるケースが増えると思います。加えて、遠隔モニタリングや既に多くの方が使っているウェアラブル機器などもそうです。私も使用していますが、最終的にはどのように活用するのかという点ですね。アメリカなどでは「テレメディスン(telemedicine=遠隔医療監視)」という言い方をします。

医療DXとひと口に言っても、非常に範囲が広く、その中でどのような形で製薬企業が医療に対して、DXに対して貢献していくか考えるステージにきていると思いますね」(沼田氏)。

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また、愛知県がんセンターでは今年から被験者が来院せずに治験に参加できるようになりました。取材を担当した望月氏によると、「患者と医療の距離を変えるのがDXのポイント」ということで、システムの基盤は重要ですが、それを使い何をするかという点を考えるべきだとも提議しました。

「例えば、働いていると病院にかかりたくても時間が合わないということもあります。それによりアドヒアランスも悪くなり…ということは起こりうるものです。治験について、『患者さんの負担』と言葉にするのは簡単ですけれど、体調が悪い中移動するだけでも本当に大変だと思うんですね。そういう意味で、製薬企業が言う『患者中心の医療』というのに正直ぴんと来ていないです。

国民目線ではどうなのかな?と思いながらみていますが、DXは物理的に行けないなどの患者にとっての利便性に新たな手法を与えてくれるという意味で非常に大きいですし、常々取材したいと思っています」と望月氏。

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製薬産業とICTの関わり

製薬産業がICTとどのように関わっていくべきか、という沼田氏の問いに対し、水氏は自身の経験について語りました。

「いち患者の立場で、9月に保険適応されたアプリの処方を主治医に頼んでいます。そのアプリの処方開始が近々できるのですが、そうするとスマホと連動した血圧計で主治医と常に連絡がとれるようになります。

自分が人柱となって使うことで、先生に対しても知見を得ていただくことに繋げたいと思っています。患者の視点からすると、先生にそういう体験をしてもらって、その治療アプリにはこんな未来がある、ということを一緒に考えてもらう機会があるといいんだろうな、という思いです」(水氏)。

患者起点で物事が進んでいく、少なくともそのDXやIOTに関して、患者からのリクエストでいろんな物事が進んでいくのが理想的です。

 

薬剤師の業務はどう変わっていくのか

4月にはリフィル処方箋も解禁し、23年1月から電子処方箋が導入され、少しずつ患者側の医療との関わり方、アクセス方法が変わってきます。その中で薬局の重要性が改めて見直されています。

先にも出た薬のデリバリーはもちろん、キャッシュレス決済もそうですし、ウェアラブル機器との連携もあり、患者自身がデータを管理し、それを必要に応じて医療機関と共有する時代がやってくる、と沼田氏は言います。

「だからこそ、患者の立場から医療にどうアクセスし、医療従事者とのコミュニケーションをどう良くしていくかがDXの一つの役割になっています」(沼田氏)。

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また、以前から言われているリアルワールドデータにも言及します。基本的な考え方は個々の患者に最適な医療を提供するものなので、治験アウトカムという概念が少しずつ積み重ねられ、それに応じて医療システムが構築される流れが考えられると沼田氏。

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水氏は、直近でサポートしている薬剤師業務を例に
「コロナ禍は薬局の役割を考える機会となった」と振り返ります。

「どうしても急性期医療ですぐに薬が欲しい方と、まだ薬が何日分かはあるし、今回も処方は変わらないから今すぐもらわなくていい方もいます。

そこの対応が、今後分かれてくるんじゃないのかなと思っていますし、診療科目によっても薬局の役割というのは違ったりしているというのが私自身の実感であります」(水氏)。

さらに、今後の薬局の役割について、対物業務と対人業務は基本的に両方大事だとも語ります。必要とする人に対応できる体制や役割が求められているのです。水氏自身が現場に立つ際には、医療機関に対し、情報を伝えるよう努めていると言います。

「これは点数が付くから伝えるのではなく、確実に義務だと思ってまして、リフィル処方に関しては、今何がどんな状況で困っている、困っていない、という状況の有るなしに関わらず、その患者さんとの接点がなくなってしまった医療機関には、薬局の方から積極的なアプローチを掛けるというのが当たり前と考えています。

そういうことも含めて、薬局の今までやってなかった仕事を見直して、必要か必要ないか、ということを選別するタイミングがきていると思うのです」と水氏。

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DXの先にある製薬企業の未来像を考える

望月氏は、医療の質を上げるには、様々な役割者がそれぞれの視点で見ることの重要性と、それを患者に理解していもらうことが重要で、その中に製薬企業として何ができるか考えるヒントがあるのではないか、と問いかけます。

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医療DXやICTの普及により、早く検査につなげることや、診断につなげていくと、あるいは治療後の予後についてもいろんなさまざまな形での支援が考えられます。それを解決するデジタルソリューションの活用が今後重要です。

医療従事者以上に患者側もデジタル活用について勉強をし知識を持っています。その知識を医療機関と相互に共有することが課題となるかもしれません。それを踏まえ、水氏はこう締めくくります。

「DXという私にとってもいささか得体のしれないものと闘ってはいますけれども、その共有された情報をどうやって利活用するかということが、我々医療者の昔からの課題であり、未来への課題なんじゃないのかなというふうに思っています」(水氏)。

DXは未来予想図に近い話なので、様々なビジネスを考える中で、いろいろな変革が起こる、ということを受け止めた上で、患者中心の医療を本当にどうしたら実現できるのか。今後のチャレンジに期待が膨らみます。

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本記事は2022年10月5日開催「Pharma Marketing Day 2022 presented byデジぽち」のセミナーセッションを記事にしています。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。
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