【トレンド】AG誕生から10年

ジェネリック医薬品(後発医薬品)のなかにオーソライズド・ジェネリック医薬品と呼ばれる医薬品があります。

実は、オーソライズド・ジェネリック医薬品が発売されたのは、2013年6月。すでに10年も前のことなのです。当初、欧米諸国に比べて後発医薬品の使用割合は低く、厚生労働省が掲げた「平成25年(2013年)3月までに30%以上」という目標を達成することはできませんでした。

その理由のひとつに、医療関係者の間で、後発医薬品の品質への信頼性や情報提供、安定供給に対する不安が払拭されていないことが挙げられていました。2013年当時、そのような不安を解消するのではないかと期待されて登場したのがオーソライズド・ジェネリック医薬品です。
※旧指標:後発医薬品の数量÷全医療用医薬品数量

 

オーソライズド・ジェネリックとは?

オーソライズド・ジェネリック(Authorized Generic:AG)には、明確な定義がありません。

一般的には、後発医薬品のうち、有効成分のみならず、原薬、添加物、製法等が先発品と同一である後発医薬品をさします。後発品メーカーが、先発品メーカーの許諾(Authorize)を受けて、製造販売するため、「オーソライズド・ジェネリック(AG)」と呼ばれています。

現在の薬価制度において、後発医薬品の定義は「同一の有効成分を有する既収載品(先発医薬品)の再審査期間が切れていること」、「当該先発医薬品と製造販売業者が異なること」となっています。つまり薬価制度上は、AGのように原薬や添加物などが先発品と同一であっても一般的な後発医薬品と同様に取り扱われています。

(中央社会保険医療協議会:次期薬価制度改革に向けて(2):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000555532.pdf

 

一般的な後発医薬品と同様に取り扱われているAGですが、なぜ、医療関係者の不安を払拭すると期待されていたのでしょうか。

 

一般的な後発医薬品とAGの違い

一般的な後発医薬品とAGに関する先発品との比較

後発医薬品は、先発医薬品と有効成分は同一、治療効果は同等であることが求められますが、表で示す通りAGは先発医薬品との共通点が多いことからAG発売の時点で効能効果だけでなく、安全性に関しても先発医薬品で蓄積されたデータを有していると言えます。

不安視されていた後発医薬品に対する品質や情報提供において、医師だけでなく患者さんにとっても安心感につながります。一方で、飲みやすさの軽減など、先発品からの改善はあまり期待できません。

 

AG誕生から何がどう変わった?

後発医薬品の数量シェアで動向を確認してみましょう。最新の調査によると、後発品の数量シェアは約79.0%※※と発表されています。

(中央社会保険医療協議会:令和4年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値:https://www.mhlw.go.jp/content/000890776.pdf

 

後発医薬品の使用割合の推移

(厚生労働省:後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について_後発医薬品の使用割合の目標と推移:https://www.mhlw.go.jp/content/000890777.pdf

 

厚生労働省は2013年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、平成30年(2018年)3月末までに60%※※以上を目標と掲げ使用促進を進めてきました。目標の達成状況をモニタリングして適宜目標を見直しており、2021年6月の閣議では「2023年度末までにすべての都道府県で80%以上」という目標が設定されました。

(厚生労働省:令和3年度 後発医薬品使用促進ロードマップに関する調査報告書 概要:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000829151.pdf

 

上述の通り、一般的な後発品とAGは薬価制度上において同様に取り扱われているため、後発医薬品の数量シェア増加とAGの関連性の統計は取れていません。しかし、AG登場前には30%に満たなかった後発医薬品の数量シェアが、AG登場から10年経った今では約79%まで到達し、全都道府県で80%※※以上という目標を設定できるほどにまで上昇したことがわかります。
※※新指標:後発医薬品の数量÷(後発医薬品のある先発医薬品の数量+後発医薬品の数量)

 

AGには治療効果、安全性の両方に蓄積されたデータがあり、情報を得られるという安心感があります。一方で一般的な後発医薬品には先発品に比べて飲みやすさ、使いやすさなどの改良や改善が期待されます。

後発医薬品がもたらす医療経済効果も期待しつつ、今後、先発医薬品や一般的な後発医薬品、AGがどのような使い分けがなされていくのか動向を見守っていきたいと思います。

 

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M3DCメディカルライターチーム

コンテンツ制作における文献調査や原稿執筆、学術チェックなどを行う。本サイトでは製薬業界や医薬品関連情報、その他お役立ち情報を発信。