本シリーズでは、2022年4月の診療報酬改定で導入が決まったリフィル処方箋について、制度の概要から導入後の影響までを解説します。
第3回目は、リフィル処方箋が導入された際の経済的な影響についての報告をご紹介します。
リフィル処方箋導入後の経済効果の予測
リフィル処方箋導入後の経済効果の予測を報告した文献をご紹介します。
社会薬学 (Jpn.J.Soc.Pharm.) Vol.39 No.1 2020 |
リフィル処方箋により置き換え可能な推定処方箋枚数
本研究では、2016 年度の年間処方箋応需枚数(電算処理分)を対象に、リフィル処方に置き換え可能な処方枚数を計算しました。
まず、リフィル処方により月に1回の通院が3か月に1回の通院になる可能性が高い患者をリフィル処方対象患者としました。
リフィル処方対象となりうる患者を第一群、そのうちリフィル処方にする必然性が高いと見込まれる患者を第二群とすると、それぞれ20.2%、4.4%が該当しました。
下図の流れで、年間の処方箋応需枚数のうち、リフィル処方箋に置き換え可能な推定処方箋枚数を計算すると、第一群で 11,114 万枚、第二群は 2,421 万枚でした。
文献より作図
リフィル処方箋を導入して、3回の通院が1回に集約すると仮定すると、第一群、第二群で導入した場合の処方箋の内訳は以下のように変化します。
文献より作図
リフィル処方箋導入後の影響
論文内では、第一群・第二群それぞれにリフィル処方箋が導入された場合の経済的影響を予測しています。
以下に内容をまとめます。
文献より著者まとめ
医療費削減効果
リフィル処方箋を導入すると、医療機関受診回数が減少するため、診療費が削減できます。
再診料(720円)と処方箋発行料(680円)を診療費の最小見積額とすると、
- 第一群:総額で1,556億円、保険負担額は1,089億円
- 第二群:総額で339億円、保険負担額は237億円
の削減額がそれぞれ算出されました。
医師の労働時間軽減
平均診察時間を5~10分とすると、第一群で926万1,363 時間〜1,852万2,727 時間、第二群では201万 7,327時間〜403万4,653時間の外来診察時間が軽減できます。
- 長時間勤務医数を127,389 人
(医療施設の医師人数×1週間の労働時間が60時間を超える医師の割合で算出) - 年間労働日数240日
とすると、長時間勤務医1人当たり、
- 第一群:6.1〜12.1時間/月
- 第二群:1.3〜2.6時間/月
の軽減がそれぞれ算出されました。
患者の病院滞在時間短縮・経済負担軽減予測
月に1回の通院が3か月に1回の通院になると、リフィル対象患者は年間で通院回数が8回減少します。
平均待ち時間と平均診察時間を合わせた病院滞在時間を20〜40分とすると、年間で2.7〜5.3 時間の軽減が算出されました。
経済的負担についても、診療費の最小見積額(再診料720円+処方箋発行料680円)を基に計算すると、年間で3,360円の削減額が算出されました。
実際の影響は未知数
ご紹介した論文は、2016年のデータを基にしており、現在の数値とは若干の違いがありますが、導入後の影響を推測するうえで参考になるのではないでしょうか。
リフィル処方箋は、患者負担の軽減や医療費の削減といった様々なメリットがある一方で、医療機関の収益減少の可能性や、病状の変化の見落としのリスクもあります。
普及状況に応じて、これらの影響の大きさも変わってくるでしょう。