PubMedを使って論文を見つけたものの、いざ英語を読むとなると億劫に感じてしまうものです。
通読すると時間がかかりますが、どこに何が書かれているのかを把握し、必要なところだけを読むのであれば、それほど大変ではありません。
英語論文検索・読解のコツを探るコラムの3回目は、臨床論文の概要を理解する3つのステップをご紹介します。
ステップ1.Abstract(要旨)から項目を書き出す
Abstractには試験の目的、研究デザイン、対象、方法、評価項目、主な結果などが記載されています。これらの要素を日本語で書き出してみましょう。
例えば、心房細動患者における抗凝固薬Aの有効性と安全性を抗凝固薬Bと比較したコホート研究でしたら、次のようになります。
ステップ2.各項目の内容を本文で確認する
ステップ1で書き出した内容に沿って該当箇所を本文で確かめると、素早くかつ漏れなく論文の全体像をつかむことができます。
各項目が記載されている箇所や内容は次の通りです。
目的
目的はIntroduction(序説)の最後の部分に書かれていることが多いです。
目的には、「介入・治療効果の検証」「疾患のリスク因子探索」「リスク因子とアウトカムの因果推論」などがあります。
研究デザイン
研究デザインはMethods(方法)に記載されています。
研究デザインの種類を大きく分けると、患者に積極的に薬剤を投与して治療の効果を調べるというような介入研究と、それ以外の観察研究、さらに複数の試験に基づいて行われるデータ統合型研究があります。
主なデザインは以下の通りです。
対象
対象となる患者の組み入れ基準や除外基準としてMethodsに記載されるほか、試験の流れを示すダイアグラムにも記されます。
方法
登録期間、群の割り付け、治療方法、データの測定方法などはMethodsに、追跡期間はResults(結果)に記載されるのが一般的です。
なお、MethodsはIntroductionの後に記載されることが多いですが、ジャーナルによってはReferences(参考文献)の後に掲載されるケースもあります。
評価項目
outcome(アウトカム、転帰)またはendpoint(エンドポイント、評価項目)として、MethodsとResultsに記載されています。
主な結果
図表と合わせてResultsに記載されます。
データの群間比較の指標として、risk difference(リスク差)、risk ratio(リスク比)、odds ratio(オッズ比)、hazard ratio(ハザード比)などが用いられます。
また、数値は平均値とSD(標準偏差)やあるいは95% confidence interval(95%信頼区間)で表されます。
群間差を評価する際にはp値も指標となり、一般的にはp値が0.05より小さいと有意差があるとみなされます。
ステップ3.その他のポイントを確認する
製剤に関する論文や海外のデータが含まれている論文では、次の点も確認しておくといいでしょう。
患者背景、国や施設、症例数、期間など(MethodsおよびResultsに記載)
ある治療法に効果があったとしても、個々の臨床の現場で用いることができるかどうかを判断する際には、医師による慎重な検討が必要です。
既往歴、年齢、人種といった患者背景や試験の実施期間、さらには国際共同治験のように複数の国や施設で行われ症例数が多い試験なのか、あるいは単施設で行われ症例数が限定されているのかが重要なポイントとなります。
製剤の投与量(Methodsに記載)
海外データの場合、製剤の用量が日本の添付文書やガイドラインに示されている範囲を超えているケースがあるので注意が必要です。
試験の限界(Discussionに記載)
追跡不能となったデータやサンプルサイズ、考慮すべき交絡因子など試験の限界(limitations)についてはDiscussion(考察)に記載されています。
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