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2022年4月に薬価・診療報酬改定が行われます。政府は「骨太方針2021」に、オンライン診療の恒久化や後発品の使用促進などを明記し、必要な制度改正を行う方針を示しました。財務省も、22年度予算編成に向けて、高齢化で伸び続ける医療費の適正化を念頭に、社会保障費の伸びを自然増に収める方針を示唆しています。

製薬業界においては、2年に1回の薬価通常改定に加え、21年度から中間年改定も始まっており、22年4月に予定される薬価引下げ水準の行方に注目が集まっています。
今回は、ミクス編集部独自の取材から、次期薬価・診療報酬改定の注目ポイントを解き明かすと同時に、秋の衆院選を含めた政局の行方や日本医師会などステークホルダーの思惑なども交えながら討論します。

本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2021年7月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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 出演者 沼田 佳之様     Monthlyミクス編集長
望月 英梨様     ミクス編集部 デスク

 

医薬品流通の長年の課題 どう変わる?

一次売差マイナスの拡大 割戻しはほぼ横這い

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望月 先ほどお話しした一次売差マイナスなのですが、7月2日に開かれた流改懇の厚労省が提示した資料をお借りしてきました。

見ていくと一つ特徴的なことが、2020年度に仕切価率と納入価率との差が一次売差マイナスという風に言われているのですけれども、よくワニの口に例えられるのですがここが開いているという状況が見て取れるかと思います。

納入価率が下がったことはコロナの影響で病院経営、薬局経営が非常に厳しいということが言われていましたので、医療機関としては比較的価格の引き下げのバイイングパワーが強く働いたのかなという風に思います。

一方で仕切価率が上昇しているという課題、改定があったにも関わらず仕切価率が上昇している、さらに割戻しの率は一定で変わっていないと。

ほどんど2015年度から全く変わっていないのかなというところも一つポイントかなという風に思います。

流通改善 川上・川下双方における課題

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沼田 これは今日のミクスのトップニュースですよね。
結構林経済課長がじっくりと解説されていて、内容を見ていただくことが一番いいと思うのですがポイントをかいつまんでご紹介いただけますか。

望月 なかなかポイントをかいつまむことが難しいので、読んでいただくことが一番だとは思うのですが、とかく一次売差マイナスということが製薬企業側から見ると、先日の流改懇を聞いていても川下に対する問題意識をなぜか業界側が一番言っていた印象があるのですけれども、業界側がなぜか医療機関とかが安く買うことに対して問題意識を示していた印象です。

流通コストの問題は川下にもかかるのですけれども、川上にも同様の問題なのではないかなと個人的にも思っていることなのですけれども、川下の取引、流通の適正化というところで、川下取引だけを正したところで本当の意味での医薬品流通の適正化にたどり着くことは難しいということで、川上、川下両方がこれまでの商習慣を見直していく必要があるのではないかなと。

記事の中でもご紹介したのですが、川上に関してはリベートアローアンスありきの価格交渉、仕切価率を下げずにリベートで補っていくというこの商慣行が影響していると思います。

これは市場実勢価格に基づくものが医薬品の価値だとするのであれば、本当に医薬品の価値を反映していくのかというところで記者としては疑問に思うこともあって、リベートがあるがためにと言い切っていいかわかりませんが、結果的に薬価の高止まりというものが生まれているのかなと。

例えば21年度改定、前回の改定を見ても類似品が多くあるような、例えば生活習慣病の薬を見ても乖離が2%以内で薬価が引き下がっていない品目があるのですね。

企業努力と言えば企業努力かもしれないのですが、それが果たして価値として本当に反映しているかというと、ブラックボックスで見えていないところもあるのではないかと思います。

結局川上は民民取引で、川下は保険に入ってきてというところで、こういったところのバランスが非常に難しくて、その分のしわ寄せが地域卸に行ってしまっているのかなと思います。

沼田 なかなか企業努力というところは難しいところがあると思うのですけれども、これも流改懇で示された調査データだと思われるのですが、これはいかがですかね。

割戻しの運用基準 調整幅の妥当性

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望月 これも先ほどの割戻しの率は変わっていないのですが、中身は一応見直しているというか整理されているということが正しいのかなと。

業界側は反映するように努力はしているという、仕切価に反映できるものは反映して割戻しも整理しているというような主張なのですけれども。

こういう実態があって、ちょっと気になることは長期収載品で医薬品の価値ではなくて、自分たちの経営状況で仕切価率をあげている回答が結構あることも気になるところかなというところですね。

沼田 もう一つのポイントとしては調整幅の問題があると思うのですけれども、調整幅についてはどのようなお考えでしょうか。

望月 林課長がおっしゃっていたことは、一つは薬価というものは全国一律なのですよね。インタビューしたときに、地域卸が21年度の改定で非常に厳しかったと聞いています。

特に4大卸も大変だったと思うのですが、条件不利地域というか山間部や離島に運ぶということは流通のコストもかかりますので、そこで狙われてしまうと流通コストが負担になるということでかなり地域卸しの経営に影響が出ているという話を聞いております。

もう一つ話を聞いてみたのですけれども、おっしゃっていたことが薬価が一律という中で価格のバッファーみたいになるものが調整幅だというお考えも示されていて、調整幅は誰のものだという議論はむしろ沼田さんが取材されていた20年前から今に至るまで、議論されてこなかったというところが本当のところかなと思っていて、私は正直調整幅の議論に今年入るのかなという風に思っているのですが、業界側は2%から圧縮されるというところにすごく警戒感を受けているような印象があるのですけれども、調整幅というものは一体何が含まれていて、どういう風に活用されるものか議論されないと、何%がいいかというところに議論がいかないと思いますので、そういった議論もあるのかなと。

じゃあ圧縮されてないのならば、薬価に反映されないからいいやというほど単純な話でもなくてですね、先ほどの川上と川下の話が一体なことと同じように、当然この話も川上に影響があると思いますので、当然その辺りは注視していく必要があると思います。

沼田 今20年前からというお話がありましたが、かつて取材していたとき非常に薬価差が大きな時代から、なるべく縮小していく流れの中でリーズナブルゾーンの幅が2%まで縮小するような流れはあったのですね。今お話があったように調整幅は誰のものかというところを中医協で議論すると、なかなかこれはそれぞれの意見を言いますから非常に調整が難しくなってくる話と思います。

あともう一つは一次売差の問題ですとか、単品化取引の問題などもかつてからずっと出ているのですね。僕も林課長の記事を読ませていただいたのですけれども、いろいろとメッセージは出されているような感じはしていて、考えるような材料としてはものすごくよろしいのではないかと思っていますし、そこは川上、川下も含めて皆さんが流通取引を考えるメッセージを出していただいたなと思っております。

流改懇 仕切価設定は流通当事者との検討が必要

沼田 一つだけ僕が思うところがあるならば、これから先本来の流通の中の問題をどのような形に仕上げていくかというところは、なかなか客観的な状況から見るとまだもしかしたら明らかにされていないのかなというところが一つ。やはりこれからどのような議論をしていくかというところを何か見たいなというか、実は奥はここ最近、昨年の中医協から流改懇の議論を見ている中でちょこちょこ出ていることは感じていまして、一つ大きなところはマーケットの変化ですね。明らかに何年間かで変わったと。

一番大きいことは後発品の使用促進が進んで、ジェネリックの数量支援が80%になっているというところが前と今では全く違っていて、このようなマーケットに変化したことが重要になってきているということが一つの要素だと思います。

あともう一つは新創品もそうですし長期品もそうですし、今のジェネリックもそうですが、それぞれのカテゴリーで市場構成要素がだいぶ変わってきたという気がしています。

そこは調整幅の問題もそうですし、仕切価の問題もそうですが、改めてそういったところに着目した形でどのような方向を考えるか。それぞれの流通当事者同士が考えていく課題ではないかと思いますし、カテゴリーみたいなことに対してどのような方向性を出していくかはこれからの議論の中でメディアの立場としては注目していきたいと思っていますので、ぜひ引き続き秋以降の議論に注目していきたいということであります。

望月 ちなみに製薬業界は流改懇でカテゴリーの変化、抗がん剤とおっしゃっていましたが、私はよくわからないのですが。抗がん剤などがカテゴリーで増えているために、仕切価率が上昇しているというような主張をされていました。実態はこれから調査されると思うので、そういった結果も明らかになると思いますし、川下の単品単価の調査もするということなので結構今までわかっていなかった実態も明らかになるのかなと思います。

川下はやはり単品創価的なものも一つ大きな課題だと思うのですけれども、そういったときにチェーンの薬局で9月以降の最多月で値が割れているというケースもあるので、こういったところは調剤徴収法に何かしら対応が取られる可能性もあるのかなと思って聞いています。これは予測の域を出ませんので、一記者が言っていることと思ってもらえればと思います。

沼田 大事なところとして、骨太方針ではなくて成長戦略なのですよね。意外ににみんな見落としている可能性があるから強調しておかないとと思うのですが、みんな最近骨太と言っているのですが、今回はこちらに薬品のイノベーションが入っていますよというところですね。

望月 あとは2016年の末に4大臣合意した抜本改革に乗っ取った改革が進められてきていて、流通に関してはまだ道半ばなのではないかなと。

そこにも項目が盛り込まれていますし、この路線でずっといくのだろうなという、それが終わったということは決してないと聞いていますのでこの路線で行くのかなと思っております。

コロナ禍での診療報酬改定

支払側・診療側の見解

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沼田 続きまして診療報酬の方に行ってみたいと思います。

こちらに診療報酬改定の論点、焦点をあげてもらいました。一番最初の頭にあるコロナの影響をどう見るかというところが今なのかなと思いますがいかがですか。

望月 新型コロナの影響は非常に大きくて、本来であれば診療報酬改定を行ったときは効果検証を行い、それを踏まえて次回の改定の資料にするということが定石というか流れなのですが、今回も調査はするのですがそれがどこまで使えるかというところは一つ議論があるところかなと思います。

コロナの影響か改定の影響なのか判断することは、非常に難しいのではないかと私も思います。

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望月 もう一つある点として、コロナの影響を考えると日本医師会が主張していることは医療費が縮小しているということですね。実際患者の受診抑制が起こったことで、医療費の抑制があったということで、今まで通りの議論をすることが難しいということが現状かなと思います。

一方で、特に小児と耳鼻科に対しては特例措置として感染防止のところで点数があったこともありましたし、感染防止のところでは多くの医療機関が取得できるような特例措置が引かれているところで、こういったところを今後どうするかは一つ大きなポイントになると思います。

日本医師会が主張していたことは、基本診療料というものは初再診に代表されるのですが、まずは特例措置を延長して欲しいと。できればそれをずっと永続的に、コロナのような感染症があり必要であったら基本診療料の中で面倒を見てもいいのではないかというところが、日本医師会を始めとした診療側の主張ということで、支払側は当然NOなので、開始早々議論になったというところです。

ぜひ記事を読んでいただけたらと思います。

かかりつけ医機能の在り方

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望月 個別の項目でどこがポイントになるかというと、一つ大きなポイントになることと想定される点がかかりつけ医の在り方というところかなと思います。

この辺りはオンライン診療もかかりつけ医が対象になるというところで、かかりつけ医がどういうものなのかという議論も必要になるように思うのですけれども、この日の中医協でも診療側も支払い側もかかりつけ医が重要なことは全員一致しているのですが、診療側は医療提供体制側なので医療体制提供側からのかかりつけ医というところと、支払い側が求める国民、患者が見てわかるかかりつけ医。

複数の診療科というよりは一つでないと意味がないというところはあると思うので、総論は推進することは賛成で、各論でちょっと意見が分かれているのかなと。

あとは患者と国民からわかりやすいかかりつけ医でないといけないなと思うのですけれども、発揮の仕方ですとか今後議論が必要かなと思います。

機能強化加算とかは抜本的に見直すべきだと。導入の際支払い側が反対したのですけれども、診療側が押し切った形で、ここは言葉を選びますが。(笑)こういったところの議論はあるのかなと思います。

あとは財務省はかかりつけ医の制度化も提案しているのですけれども、これに対しては日本医師会は反対するということは明確におっしゃっていたかなと思います。

沼田 いずれにしても診療報酬の方では、かかりつけ医がいろいろなところに波及するものになりますし、地域包括ケアを構成する要素の一つにもなりますから、ここをどういう風に最後今年の改定でどう落とすかというところは重要ですね。ポイントになってくるかなという風に思いますね。

 

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本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2021年7月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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