初回ゲストは株式会社カケハシ 代表取締役社長 中尾 豊様にお話を伺います。
インタビュアーはMonthlyミクス編集長 沼田 佳之様です。
本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2022年4月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。 ▶ 動画版のご視聴はこちら(無料) ▶ デジぽち最新の動画はこちら |
デジタルを前提にした薬局の業務変革のあり方とは?
沼田 佳之様(以下敬称略) Monthlyミクス編集長の沼田です。
沼田 本日から『デジタル医療革命』というタイトルで、今活躍されている各社のトップの方からお話をいただくという新コーナーがスタートいたしました。
第一回は株式会社カケハシの中尾社長にお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。
中尾 豊様(以下敬称略)よろしくお願いいたします。
沼田 それでは、早速参りましょう。コロナによって医療環境も医療業界もだいぶ大きく変革して参りましたが、カケハシでは、デジタルを前提とした薬局経営、特に薬局の業務変革に取り組まれております。
まず簡単に、社長の方から今の取り組み状況についてお話しいただければと思います。
中尾 改めまして皆さん、カケハシの中尾と申します。我々は、薬剤師の業務の付加価値が患者さんに届きやすいように、業務変革や効率化を支援する会社です。
Musubiが叶える医療体験の向上と業務効率化
沼田 なるほどありがとうございます。続きましてカケハシで今、進めておりますソリューションをご紹介いただければと思います。
中尾 2016年の創業から約6年経ちますが、ソリューション自体は5つ出しております。その中で一番、軸になっているのがMusubiというサービスです。
これがどういうものかと言いますと、今まで医師や薬剤師がカルテを記載するという概念があり、そこに対してのシステム化やIT化はこの業界で進んできたのですが、今までは効率化、つまり早く書けるという概念でとどまっていっていたと思います。
一方で我々の考え方としては、患者さんにどんなことをお話したら患者さんにとってより新しい気づきがあるのかや、健康リテラシーが高まるのかという「サジェストを出す」という概念でこのサービスはあります。
患者さんの年齢、性別、疾患、季節、処方されているお薬や生活習慣を分析して、例えば「あなただったらこういうお薬を飲んでいるので、こういう運動がおすすめです」「お薬を飲む際はこんな食べ合わせに気を付けてください」とサジェストが出るようになっています。
薬剤師がMusubiを確認しながら一人ひとりの患者さんにあった服薬指導や、患者さんとのコミュニケーションのきっかけづくりに役立てていただいています。
あとはその場の画面タッチで薬歴のドラフトを自動で作成することができます。服薬指導をしながら一定の薬歴が記載できるという業務効率化の側面と、患者さん・薬剤師さんへのサジェスト機能によって医療の質向上が叶えられるという側面があるのが、Musubiの特徴です。
2017年にサービスをリリースし、現在は全国の大手法人から地域密着の個人薬局までご照会いただいています。
沼田 ありがとうございました。今Musubiのお話を伺ったところなんですが、使ってる薬局の効率化、つまり生産性の面ではいかがですか。
中尾 ありがとうございます。いろいろな企業様と一緒に計測したデータでコメントさせていただきます。
元々使用していた電子薬歴からMusubiに切り替えた際に、薬歴1件あたりの記載時間が平均で約75秒減るという結果が出ています。
一日例えば100人患者さんがいらっしゃる薬局で換算すると約2時間薬剤師の仕事が浮く形になるので、その分フォローアップや在宅にトライしやすいというお声をいただいております。
もう一つPocket Musubiという、少しフォローアップの文脈でお話すると、電話とPocket Musubiの比較をある法人さんが50例ずつぐらいでされた時の結果がこちらです。
電話だと1例あたり平均約38分。フォローすべき患者さんを抽出し、電話をかけ、フォローアップ内容を記載するまで全て含めて38分なんですね。
それがPocket Musubiですと平均約13分でできるので、1件あたり25分差が生まれる形になります。
つまり1件あたりで時給換算すると約1500円分薬剤師の労働時間が浮くことになるので、これからフォローアップが主流になってくることを考えると、こういったデジタルの活用は効率化という側面においても寄与するのではと感じております。
沼田 なるほど ありがとうございます。
ちょっと伺いたいんですけど、Musubiという名前の由来は何でしょう。
中尾 患者さんと薬剤師が結ばれるようなイメージで、ロゴをデザインしています。
Mの山の右側は白衣を着た薬剤師のイメージで、左側の緑が患者さんのイメージです。握手している様子がMであらわれています。患者さんと薬剤師の関係性がより良くなってほしいという思いを込めてMusubiという名称にしました。
医療業界の変化とビジネスのあり方
沼田 最近は患者中心の医療が広く取り上げられています。それらを実現するための薬局作りや取り組みについてはいかがですか?薬局も様々な変化の時を迎えてきてるように感じております。
中尾 創業してからもだいぶ変わってきたなと思います。
やはり薬機法の改正や2022年(令和4年)の調剤報酬改定が後押しとなり、業務については単発の服薬指導というよりは継続的な確認・情報収集、いわゆる「フォローアップ」と言われている領域にシフトし、在宅にとりくんでいこうという流れに。 また得られた情報を地域の他の医療機関に連携するようになってきています。
端的に言うと、今まで薬局は比較的、立地依存性が高いビジネスでした。
患者さんにとっても、病院の近くに薬局があることは利便性が高いという側面があるので、私は一概に否定するつもりは全くないです。
ただ薬局薬剤師が能動的に患者さんから「どう情報を引き出し付加価値を提供するか」を薬局だけで問題解決できない時、いかに他の医療機関へ展開していくのか。
それらのタスクシフトが生まれたので、テクノロジーの活用が必要な時代になったというように感じていますね。
一番重要なことは、患者さんに価値を与えること
沼田 まさに今おっしゃられましたこの22年度診療報酬改定では、調剤に大きく関係する点として、一つはリフィル処方箋の導入、あとオンライン服薬指導も入っております。この話題はデジタル化が進んでいく中で薬局の業務改善という側面から御社のような取り組みにおいてかなり追い風なのかな、という感じもするのですがいかがでしょう。
中尾 結論から言うと追い風ではあるんですけれども、時代がリフィル処方箋やオンライン服薬指導といった一つのキーワードで動くという感覚はあまり無いです。
『一番重要なことは、患者さんに価値を与えることである』という概念を最上位概念に置いた時に、「薬をもらって早く帰りたい」という患者さんは一定数います。
例えば「この薬このタイミングで飲んでいいんだっけ」「さっき飲んだばかりだけど昼食が遅かったから」または「夜ご飯から2時間しか空いていないけれど飲んじゃっていいのか」といった服用に関する疑問は、薬局で服薬指導を受けているときではなく、普段生活している中で発生するものだと思います。
あとは服薬後に副作用が気になってしまうのもそうです。結局、問題解決をしようとした時に『患者さんの日常生活で起きる問題の把握』というのが一番本質的だなと思っています。
そうなってくるとフォローアップやリフィル処方箋、オンライン服薬指導という話題はありますけれども「誰がどんなことで困っていて、どうしたら解決できるのか」という視点に立って、僕らはソリューションを作っていこうと思っているんですね。
2020年の薬機法改正でフォローアップが義務化されましたが、例えば私たちが提供するフォローアップツールのPocket Musubiというサービスは2018年から開発に向けたプロジェクトがスタートしているんですね。
先ほどお話した通り、患者さんに対して薬剤師が価値を出すためには、『フォローすべき患者さんに関する情報の収集と必要に応じた問題解決へのアプローチ』が一番本質的だと思っています。
それを先に打ち出してどう価値を出すのかということにチャレンジし続けているので、キーワードと共に業界が変わってきたのはすごくポジティブではあるんですけれども、本質をぶらさずに頑張っていきたいと思っています。
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【トレンド】デジタルの活用で創薬・医療が連携された世界に~カケハシ中尾社長インタビュー【2/2】~
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