初回ゲストは株式会社カケハシ 代表取締役社長 中尾 豊様にお話を伺います。
インタビュアーはMonthlyミクス編集長 沼田 佳之様です。
本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2022年4月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。 ▶ 動画版のご視聴はこちら(無料) ▶ デジぽち最新の動画はこちら |
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【トレンド】問題解決の本質は『患者さんの日常生活で起きる問題の把握』~カケハシ中尾社長インタビュー【1/2】~
カケハシが目指す将来像とは?
沼田 ありがとうございます。そうすると今回の企画のテーマでもあるデジタル医療革命、2025年から高齢化のピークを迎え2030年に向けて社会構造やシステム自体も大きく変わってくる時期に入ってくると思います。
その中でカケハシが目指す将来像を、特に2030年ぐらいを見通して医療像や地域における薬局像、あるいは薬剤師さんに関わっていくのか、という未来像について少しお話を伺いたいと思いますが、いかがでしょう。
中尾 まず2030年を予測した時に一番明確なファクトは人口動態だと思っています。 2040年までは高齢化比率が上がってきますが、2040年以降は高齢化比率は上がらず労働者人口が減ってくるという構図になります。
2030年は団塊世代の高齢者が増えることになりますが、どう高齢者を支えていくのかという側面と、社会保障費としてどこまでそこに使うべきなのかという側面もあるかなと思っています。
2030年前後の労働者を支えるためだけに医療従事者を一気に増やすということも、合理性を欠くと思っているので、どちらかと言うと今の医療従事者の数を、そこまで劇的に増やさなかったとしても医療の質を担保できて医療介護が回る世界を作っていかざるを得ないだろうなと思います。
そうなると、デジタルの活用はもう避けて通れないですね。
デジタル活用の本質は、『生産性を高める』ということなんです。医療の質を高めることにおいても効率を上げることにおいても、結果的に精度をどうやったらあげられるかという議論になっていきます。
ここで有効なのがデータの活用であると思っていて、どの患者さんに問題が発生しているのかというのを分からずに電話でアプローチする方法は生産性が低いと思うんですね。
患者さんが100人いた時に「この5人が困ってます」ということと、その5人が何で困っているのかをデジタルで把握した上で解決に向けたアプローチをとるという動きの方が生産性が高いと言えます。
今後、地域の患者さんと医療従事者が繋がる世界観がまずあって、そこのキーマンになるのが薬剤師になるだろうなという風に思っています。
診察におけるタッチポイントは月に1回、長ければ2か月に1回、短い処方であれば2週間程度です。その間のタッチポイントを担う薬剤師がフォローアップすることが前提となった現在においては、地域の方にとっての身近な相談相手が薬局や薬剤師になり、患者さんの情報を一番持っているのが薬剤師になる。
服用状況や健康に関する問題解決と、医療機関との情報連携という役割も担う形になるので2030年にむけて実は薬剤師がかなりパフォーマンスをする状況になってくるかなと思います。
こういった考え方に対して、2025年ぐらいまでは若干懐疑的な空気感が流れてくるかなと勝手に予想してるんですけれど、そこに対して国も業界も少しずつ変わっていこうとしています。
薬剤師のパフォーマンスに関するファクトが各学会で発表され、徐々にそれがスタンダードになり、我々以外の企業もさまざまなデジタルツールを出し、各所で患者さんの問題の発見と解決、連携をし始めた。
これにより、2030年までには医療データが沢山たまってくると思います。 データの活用シーンで言うとどういう医療行為をするのが最も良いのか、みたいなところも解析でもっと分かってくると思うんですね。
デジタル活用が進み、2030年は次の世界観が見えてくる
元々臨床試験のような文脈では、患者さんの同意を得て二群間試験をして前向きなのか後ろ向きなのかなど、結構準備が大変ですよね。N数を取るのもかなり大変な世界ってあると思うんです。
こういった臨床に関わるデータがリアルワールドデータがクラウドベースで取れると、例えば『二型糖尿病で腎機能が悪く、こんな生活習慣をしている65歳男性』に対しては「このぐらいの薬が良いのではないか」とか、「これぐらい投薬すると副作用が起こる可能性が高い」といったところが少しずつタイムリーにサジェストされるようになってくる。
すると医師も診断・診察で非常に活用しやすいですし、薬剤師も提案しやすくなってくるので、データがプールされてくることで、2030年は次の世界観というのが垣間見え、チャレンジできそうというフェーズにあるんじゃないかなと個人的には思っています。
沼田 なるほど。もうここから10年切っており非常に変化が進んでまいりますので、薬局薬剤師さんの役割、あるいは地域医療の中での薬剤師さんの役割も変わってきて、まさに今最後におっしゃられたデータというのが色々な意味で活躍し、影響を与えてくるのかなということで、カケハシの役割も高まりそうですね。
製薬業界の変化や今後の見通し
沼田 最後に、中尾社長は製薬企業ご出身ですよね。 ですから、今のお立場で見て、この製薬業界を見てどういう風な思いがございますか。
中尾 コロナ禍においては、MRがそれほど活動しなかったとしても売上げが劇的に変わらなかったというファクトが出てきたんですね。 ここは非常に感慨深い状況になってくるかな、と思っています。
例えば製薬会社が販管費として高い割合を置いていたマーケティングやMRの部分をちょっとずつ何かに代替できるのか、もっとMRの生産性を高められるのかという問いを考えるフェーズが来ていると思いますね。 そこからできたものを広げるっていう側面に対してこれから改革が促されると、もう一つは創薬の部分においても、変わってくるかなと思っています。
創薬というのは臨床で得られたデータをどうマーケットイン的に開発していくかというよりは、化合物ベースで開発される傾向が高いと思います。
今後はもうちょっと臨床との橋渡しというところで、先ほどお伝えしたフォローアップのデータや市販直後調査も含めた副作用データなどデータプールができてくると、例えば「このお薬は副作用が出る時ヒリヒリが出る可能性がこのぐらいあるんだ」といったことがタイムリーに分かるようになれば創薬においても非常に生産性が高まる可能性があると思っています。
医師や薬剤師に対する情報連携機関だったMRの働き方が変わる時代にも入ってきますし、デジタルがそこに入り込めるようになってくるので、デジタルを活用してMRがどう活躍するのかと、あとは創薬においてもデータプールをどう活用するのかという議論に入ってくるかなと思います。分断された世界というよりは連携された世界に入ってくるだろうなと考えています。
沼田 なるほどありがとうございました。今回は、カケハシの中尾社長に自社の取り組みから医療関係の周囲の話も含めてお話を伺ってまいりました。
このコーナーは継続していきたいと思っておりますので、また是非ご視聴いただければと思います。
中尾社長、本日は本当にどうもありがとうございました。
中尾 ありがとうございました。
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【トレンド】問題解決の本質は『患者さんの日常生活で起きる問題の把握』~カケハシ中尾社長インタビュー【1/2】~
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