令和4年の診療報酬改定におけるトピックのひとつである、情報通信機器を活用した「オンライン診療」についてご紹介します。
概要を取り上げた前編に続き、後編ではオンライン診療の現状や今後期待できることについて、関連するデータをご紹介します。
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【トレンド】注目されるオンライン診療#01 その概要と変遷を確認!
実施施設数と年齢階層別受診者の割合
オンライン診療の実施施設数については、2020年4月の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う時限的・特例的な対応」に登録した医療機関数が参考になります。
令和3年10月~12月分の調査結果において、2020年4月の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う時限的・特例的な対応」に登録した医療機関数は、2021年6月末時点で16,872件となっていました。
これは、全医療機関数の15%程にあたります。
また、2021年6月の1ヵ月間において、電話及びオンライン診療は医療機関あたり10.4件実施されています。
厚生労働省「令和3年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000840233.pdf
年齢階層別の受診者の割合(令和3年4~6月)については、子どもから若年層までで半数以上を占め、勤労世代まで含めると9割近くを占めていました。
厚生労働省「令和3年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000840233.pdf
患者からみたオンライン診療
続いて、実際に受診した患者さんの声の参考として、2021年8月から9月に実施された、厚生労働省「かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査」よりご紹介します。
本調査では、施設調査対象施設の半数の施設(1,400施設)に対して、1施設ごとに6名の患者を選び、総数466名から回答が得られました。
そのうち、オンライン診療の受診経験があったのは42人と、数としては少ないのですが、ある程度の目安になると言えます。
オンライン診療受診経験のある患者に受診時に感じたことを質問したところ、「感染症のリスクを心配する必要がないこと」や、「リラックスして受信し、症状などを話しやすかったこと」、「待ち時間が減ったこと」、「受診の時間帯を自分の都合に合わせられたこと」のようなメリットについて、多くの人が「そう思う」と回答していました。
一方で、オンライン診療のデメリットとして、システムの使い方や、映像・音声の乱れ、説明の難しさ、コミュニケーション不足、十分な診察が受けられないことが挙げられます。
それらについては、「そう思わない」と回答した人が多く、受診における大きなハードルにはなっていないことが見て取れます。
厚生労働省「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)
かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その2)報告書(案)」を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000860734.pdf
また、今後の受診についても尋ねたところ、オンライン診療の受診経験がある人は「新型コロナウイルスの問題とは関係なくオンライン診療を受けたい」が「新型コロナウイルスの問題とは関係なく対面診療を受けたい」と答えた人より多くなっていました。
厚生労働省「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)
かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その2)報告書(案)」を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000860734.pdf
オンライン診療の可能性
現状、オンライン診療は、通院が困難な患者を主な対象とするなど、通常の診療の代替という考えで進められています。
しかし、通院などの生活面への負担を軽減できる利点から、疾患や治療次第では対面での診療より優れた治療を実現できる可能性もあるのではないでしょうか。
一例として、高血圧遠隔治療の有効性と安全性を検証した臨床試験(2015~17年実施)が挙げられます。(Yatabe J, Yatabe MS, Okada R, Ichihara A.JMIR Cardio. 2021 Aug 31;5(2):e27347.)
【方法】 |
臨床試験の結果、期間最終週の在宅での平均収縮期血圧について、遠隔医療(125mmHg、SD 9mmHg)のほうが通常の治療(131mmHg、SD 12mmHg)より有意に低いという結果が出ました(P=0.02)。
なお、試験期間全体における、1週間当たりの血圧測定数についても、遠隔医療(17.8回、SD 11.5回)が通常の治療(12.1回、SD 11.0回)よりも有意に多くなっていました(P=0.02)。
論文では、考えられる理由のひとつとして、遠隔治療群において高血圧専門医によるチーム医療のもと、アプリを介して質問ができたことで、より集中的かつ専門的な介入につながり、降圧介入の効果が高まった可能性を挙げています。
これからもICT技術の進歩や社会のニーズに伴い、オンライン診療のさらなる普及・発展が見込まれます。その有用性についても検証が進んでいくことでしょう。