MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう!

厚生労働省は2020年度診療報酬改定に向けた中医協の検討項目に、「フォーミュラリ等への対応」を盛り込みました。4月以降、中医協で議論されることになります。

今後のMR活動では、こうした地域動向をいち早くキャッチアップすることが一段と重要に。
今回のLive配信では、フォーミュラリの実像を分かりやすく解説すると同時に、MR活動への影響や情報収集のポイントをご紹介します。

本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2019年4月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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 出演者 沼田 佳之様     Monthlyミクス編集長
望月 英梨様     ミクス編集部 デスク

似て非なる院内フォーミュラリと地域フォーミュラリ

これから議論になっていくポイントとしましては、これをいかに地域に広げるかということですから、地域フォーミュラリというような形になります。

それぞれ少しづつフォーミュラリという言葉は同じなのですが、内容は違うのではないのかなというところもありますので、ちょっと望月さんの方からここを解説いただけますか。

院内フォーミュラリ導入の背景は薬剤費圧縮と在庫管理コスト軽減

MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう_院内フォーミュラリと地域フォーミュラリ

望月 ちょっと今お話しましたが、院内フォーミュラリを策定するきっかけとしては高額薬剤が増えて、出来るだけ生活習慣病ですとか長期収載品にあたるようなものの薬剤費を圧縮したいという思いもあるのかなということが見えます。

加えてですね、後発品の品揃えが面倒と書いてあるのですが、後発品を院内で数多く持ってしまうとかなり大変と。

一説によるとARBで60種類とか持っている医療機関もあるということでそうなると薬剤部の負担も大変ですし、果たして60種類あるものは全部同じなのかというところの評価も大変というところが一つあるかと思います。

そういった中でさらに自治体病院などでは予算が決まっていらっしゃるところもあるので、薬剤購入予算抑制という圧力もあると。

その中で採用薬の絞り込みが必須ということで、院内フォーミュラリを策定すると。どちらかと言うと、医薬品適正使用の観点もあるのですが、やはり薬剤費というところが重いのかなという印象を、院内フォーミュラリのところでは抱いております。

山形県酒田市の事例では背景に少子高齢化なども

一方、これが地域に広がったときにどうかという話なのですが、もちろん院内から波及して地域に広がっていくというケースももちろんあるかと思うのですけれども、地域フォーミュラリを策定しようという地域は少し状況が違うかなという風に思います。

今地域フォーミュラリ策定に動き出しているところは全国でいうと山形県酒田市の日本海ヘルスケアネットが第一号と言われていて、あとは協会健保静岡支部。この二つが有名かなと思うのですけれども、二つを取材していて思うことはエリアの変化が一つ非常に大きいかなと思います。

みなさまもご存知の通り少子高齢化も進んでおりますので、医療現場も地域包括ケアに向けて動いていると。その中で医薬品の使い方も当然院内にとどまらずに地域に広がっていくという時代ですよね。

ここにも書いてあるのですが、見ていらっしゃる患者さんの変化ということもあります。一つはいわゆる急性期疾患、感染症などから生活習慣病患者さんが増えたということ。もう一つがですね、患者さん側の変化なのですが単身で住まれている高齢者、独居の高齢者の方が非常に増えていると。

さらにですね、認知症患者さんがここ25年で700万人と書いてあるのですが、地域で爆発的に増加していくと。こういった変化があります。

認知症患者さんに関して考えて見ると、みなさん医療従事者側は薬を飲まないことが課題だと思われがちなのですが、介護の方に取材をすると認知症患者さんは飲んだか忘れて飲みすぎてしまうというケースも結構課題だと聞くのですね。

飲んだかわからない、飲みすぎたかもわからない。じゃあ誰がそれを把握してコントロールするのかという中で、医師・薬剤師が全部出向いてやるとなると難しいところがあると思います。

その中で地域で見るという観点で考えると、処方の単純化というとあれなのですが、簡便化する、見える化するということは非常に重要かなと思います。地域でポリファーマシーも課題になっていますので、そういったことに対する効果もあるのかなと期待できる面もあるかと思います。

少子高齢化の進行に伴い求められる 地域の多職種連携

沼田 かなり地域フォーミュラリになりますと社会の変化ですよね。今言われていることは2025年まではピークを迎えていく流れなわけですけれども、それを過ぎますと今度は労働生産人口が減ってくるということで、これだけの認知症患者さんが増えたり、単身の高齢者の人が増えてくると社会で、町でこの人たちをどうやって見守っていくかということが多分政策上もいろいろと大事なポイントになってくると。

ですので、エリアの中で共通した医療従事者、介護従事者の人たちの意識のマインドを作っていく中ではこのお薬の問題は外せないですよね。

望月 やはり医療従事者も高齢化しますので、特に都心にお住まいの方はあまり感じていらっしゃらないかもしれませんが、やはり地方に行くとすでに医療資源を十分活用しないと医療が持続できないということが結構大きな課題になってきていると思うのですね。そこに認知症というものが乗っかってくるということは重い課題だなという風に思います。

沼田 実際にネットワーク化によって進んでいく流れにならざるをえないのかなというようなことですね。 実際に地域のフォーミュラリを進めている流れが一つありますので、それをご紹介していただきたいのですが、これは望月さんが実際に取材されたケースだと思うのですけれども。

地域フォーミュラリの策定でよくある3つのケース

MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう_地域お支えるフォーミュラリのイメージ

望月 先ほど少しお話しましたが、地域フォーミュラリというと動いている地域で有名なところでいくと山形県酒田市と静岡県というところになるのですが、地域フォーミュラリを動かすには大きく分けて3つのパターンがあるかなと思っておりまして、一つは日本海ヘルスケアネットがやっているような地域医療推進法人をベースにしたもの。

もう一つが協会健保静岡支部と先ほどお話しましたが、保険者が地域フォーミュラリを策定して各医療機関に働きかけるような保険者主導のパターンと。

もう一つあるのが、ここに示しているようなデータヘルス計画をベースに話を進めていくパターンかなという風に思います。

フォーミュラリ拡大の土台にデータヘルス改革あり

望月 Monthlyミクスでも少しご紹介させていただいたのですが、このモデルで話を進めている地域もあります。地域を言っていいかがわからないのですが、いくつか聞いているところがありますし今進めているところもあるかなと。このデータヘルス計画をベースに地域フォーミュラリを作ろうという動きが全国で起きている現状にあると思います。

何がポイントかと言いますと、データヘルス計画の中では地域の現状をデータで見ることができると。そこにデータヘルス計画を考えるときには多職種、医師、薬剤師、ケアマネージャー、ヘルパー、看護師、それと行政ですね。

いろいろな職種が集まって地域の、エリアの課題を抽出してどうしようかと議論する場ですので、その中で地域フォーミュラリということを考えるということは、理にかなっているのかなと思っております。

沼田 ここにもありますけれどもフォーミュラリの構築・共有・連携、すなわちここに関わってくるような人たちが共通認識を持つ、持てるかというところが非常に大きな課題だと思うのですよね。

望月 共通認識を持つことが非常に難しいと思うのですね。みなさん注目しているポイントが違うので難しいのですが、共通認識を持つために議論する、ディスカッションするということがまさしく本当の多職種連携ですのでそういう意味では非常に重要な取り組みだなと思っています。

沼田 そういう意味でいくと議論の土壌にあげるためのデータをいかに活用するかというところになってくるのだと思います。

このフォーミュラリを実際に地域に広げる中でですね、その地域地域の実情に応じたような施策を組むということでデータがなければ到底できませんので、国としてはフォーミュラリの議論はあることはあるのですけれども、それ以外にデータヘルスをどう活用するかと。

データヘルス改革に登場する「データ」と「人」

MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう_データヘルス改革 市町村における高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について

ここでお示ししているものはデータヘルス改革ということで作成されたイメージ図ですが、市町村におけます高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施についてということを示したスライドです。

上にありますように地域に関するようなレセプトデータですとか、あるいは健診データ、介護のデータ、あるいは要介護認定も含めてなのですが、一人の患者さんに伴って出ているようなデータを統合しまして、それを一つ総合化していろいろな施策に落とし込んで行こうと。

ここで見ますのは高齢者の疾病の予防であるとか、重要化予防みたいなところを保健事業の中から入れていくということが一つ。もう一つが介護予防の中でも生活機能の改善などを進めていくことが大事ですね。これをデータで見ていくのですが、もちろんその中に医療の関わり、接点を持つということで、かかりつけ医の機能を高めていく。

ここには書いていないですが、これから薬剤師さんが多分入ってくるのだと思いますけれども、医師・薬剤師がこのデータを活用しながら地域のより具体的な施策をと。

フォーミュラリというものはその中で薬を使ってその薬の最適化を進めていくということが役割になるのだと思いますが、やはり実際まず合議制になる前のデータをいかにきちっとした形で分析して、それを議論のテーブルに乗っけていくかというところが、非常に大きな課題になるのではないかと思います。

望月 国の流れとして地域包括ケア、今データの共有化というお話をさせていただいているのですけれども、その流れもあるので地域医療構想に基づいて地域医療計画が各都道府県で策定されていると思うのですが、当然医薬品も必須ということはみなさん考えればわかることだと思うのですね。

それが私が地域フォーミュラリだと思っているのですね。医薬品版の地域医療構想というか、地域医療計画の医薬品版みたいなものが地域フォーミュラリかなと。基づくものがこのデータかなと思っています。

法律や政策面でもデータ活用を推進する流れに

望月 今通常国会で審議中の健保法関連法案もありますし、これに電子処方箋、今まだ本当に枚数が少ないのですが増やす方向に厚労省も舵を切っておりますので、そういったところが進むとわっと一足飛びにデータの一元化と。しかも即時にデータが見れると。

今は一ヶ月くらいレセプトデータも遅れるのでそのデータ使えるのという話もあるかもしれないですけれども、そういう時代がもうすぐそこまで来ているのではないかと、いきなりあっという間にくる気がしているのですけれどもね。

沼田 2021年には今の法改正が進みますとマイナンバーカードと健康保険証が一体化されるということになりますし、そのカードを使うと個人の健診データも自分で見ることができるようになりますから、かなり住民の方たちも意識が高まってくるという流れがあって、かつ医療者サイド、介護者サイドもその情報データに基づくような施策にいくということになりますので、非常に大きなドラスティックな動きになるかなということです。

薬価だけでない、フォーミュラリでの医薬品評価基準

ここまではフォーミュラリが出来上がる前段の話をしてきたのですが、ここから少し実際にフォーミュラリ、今日は製薬会社の方がたくさん視聴していらっしゃいますので医薬品が実際どのような形でフォーミュラリに反映されるのかというところについて少しお話をしていただければと思いますが。これも望月さん取材してきたケースだと思うのですけれども。

MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう_酒田地区薬剤師会地域フォーミュラリ - ジェネリックの評価基準について

望月 先ほどからお話ししている山形県酒田市の地域フォーミュラリなのですけれども、これは薬剤師会が主導して作っているのですがフォーミュラリに入れる医薬品を評価する基準を定めているのですね。

フォーミュラリと聞くと製薬企業の方、「薬価で決めているのでしょ、安ければいいのでしょ、先発品も入れてもらえる目処などないのでしょ」とすぐそちらの方向に行ってしまいがちだと思うのですけれども、きちんと基準を定めてそれに則ってフォーミュラリというものも考えているところがあります。

具体的にはですね、ここに項目を挙げているので読ませていただくと、生物学的同等性試験の結果、原薬について、1包化の安定性、薬価、錠剤印字、適応相違という項目があります。

薬価以外に全部を加味して決めるのですが、点数付けでいうと1点しかなくて実は点数的にはそんなに高くないのですね。むしろこれを見ると医薬品の品質ですとか安全性ですとか、そう行ったところに重きを置いているなというところがここからも見て取れるかなという風に思います。

取材して伺っていて印象に残ったことが、結局決めて地域フォーミュラリってこの医薬品ならいいですよと地域に推奨するという形になるのですが、推奨するということはお墨付きを与えていることになるので薬価だけだとなかなか難しいですよね。

安定供給できるように原薬にも書いてありますけれども日本+海外の複数企業と書いてありますが、安定供給ができること、品質的にもいいのではないか。

生物学的同等性を見せてもらったのですけれども、データは企業でまちまちだった印象がありますので、こういったところを見ているというところかなという風に思います。

沼田 そうやって聞くと原薬の原産地でいうと日本で生産しているとなると非常に高い3点の評価になりますけれども、逆に非開示というものもあるのですね、-1点となっていますよね。

望月 公表されているので言っていいと思うのですけれども、武田テバさんが公表する方向にしたということをリリースされていると思うのですけれども、ここはかなり各社企業でまちまち、理由もいろいろあるように聞いているのですが。

こういったところは企業の取り組みとして医療従事者が見ているよということは非常に重要なメッセージかなと思います。

また生物学的同等性試験も厚労省が認可しているのであれなのですが、かなり数値的にばらつきがあるので、そういう意味でいくと意外に薬価だけで判断することはある意味危険かなというところもありますし、これを見ると逆にいうと製薬企業に求められていることというものが少しわかるのかなという気もしております。

後発品・先発品関わらず意識したいクライテリア

沼田 このクライテリアは非常に参考になるものだと思います。これから各地でフォーミュラリリストを作成するときの一つの参考になると思うのですけれども、これを見ると逆にいうと製薬会社の立場でいうとこれに合致するような体制を事前にとっておかないといけませんよということにもなりますし、先発もそういう意味でいうと同じでありまして後発品だけの話ではないわけですから。

望月 原薬の問題、最近はっきり言って名前をあげるとあれかもしれないですがファイザーさんの原薬問題を皮切りにMSDさんもありましたし。結構正直先発メーカーも多いですよね。

やっぱり原薬の納入先って先発メーカーも後発メーカーもそんなに変わらないですよね。多少国に関しては一回調査があったときにばらつきがあった印象はあるのですけれども、そういう意味でいうとここは製薬企業全てに求められていることかなと思います。

医師と同じく重要な、薬剤師の知見と役割

沼田 ありがとうございます。こういう形でリストのクライテリアになるわけですけれども、これを実際に医師と薬剤師と関係者間で合意していくという流れになるのですが、多分今のクライテリアを現実的なものにしていくのは薬剤師さんがやっていくことかもしれませんけれども。

MR必見 地域フォーミュラリを学ぼう_地域版・医薬品評価の検討方法

薬学的な知見と書いてありますけれども、これがフォーミュラリを進める上で極めて重要な絵図でありまして、ここが果たして本当にできるのか。誰もが首を傾げて本当かな、と言うところなのですけれども。いかがですかね。

望月 今の酒田市の実例が一番いい例で、まさしく評価基準そのものが薬学的知見をすごく反映しているなと私は思います。品質、製剤的評価、薬価、安定供給とここにも書かせていただいているのですが、このあたりAUCとは何かと思われるドクターも多いと聞きますね。

そうだとすると医師が持っている知見と薬剤師が持っている知見は違うと、医学的知見と薬学的知見は違うのですよね。ここは意外に病院内ですと共有されているところもあってこういうことはわからないから薬剤部に聞こうと徹底されていると思うのです。

それも病院内でのディスカッションが、エリア全体へ広がる感じですね。それでこそ多職種連携ですし、保険薬局がどこまでできるのかという、今の沼田さんのご質問はそういう意味だと思うのですけれども、保険薬局というよりは地区薬剤師が音頭をとって欲しいなと思うところではありますよね。

沼田 確かにそれが本当にできるのかというところも非常に重要であります。 あとはぜひこれをやることによって、下のブルーのところに課題解決が書いてあるのですが、今問題になっているポリファーマシーの問題ですとか、あるいは生活習慣病薬の処方の適正化。

 

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本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2019年4月より公開しているの動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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