デジぽち「毎年薬価改定の行方」17ヘルステック分野の変遷や課題、展望について、最前線で活躍する企業と対談するデジぽちの新コーナー「デジタル医療革命」。

2回目のゲストは株式会社JMDC COO杉田 玲夢様にお話を伺います。
インタビュアーはMonthlyミクス編集長 沼田 佳之様です。

本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2022年8月より公開している動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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 出演者 沼田 佳之様     Monthlyミクス編集長
杉田 玲夢様        株式会社JMDC COO

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【トレンド】国内2,000万人分の医療データを活用~JMDC杉田COOインタビュー【1/3】~

 

製薬産業にとって有効なデータ活用 開発やセールスのコスト改善にも

沼田 リアルワールドデータの入門編をテーマとして、Monthlyミクスの紙面では杉田さんより奥深いお話も掲載しています。 実際どういうふうに活用していくかについて、細かく見ていきたいと思います。 例えば「製薬産業がデータをどう活用したらいいか」といったイメージはございますか?

杉田 今は実際に8〜9割の製薬会社で利用いただいていて、部署も本当にあらゆる部署にわたるので、それぞれ使い方は全く異なる傾向にあります。今後の可能性も含めて申し上げると、例えば創薬の領域です。

弊社のデータを見ると、特定のお薬が処方された患者さんの中で、明らかに「効いている」群と「効いていない」群とが見えることがあります。

そうすると「もしかすると、その患者さんの属性によってはこの薬が有効な群と、さほど有効ではない群が分かれるかもしれない」「もしかすると、この群では副作用が強く出るが、この群ではそれほど出ないのかもしれない」と仮説を立てることができます。

それによって患者さんがどのような遺伝子などの属性を持っているか、または服用している薬などのバックグラウンドを元に、新たな創薬の可能性がでてきます。
デジぽち「毎年薬価改定の行方」06

ほかに開発の面でいうと、日本の臨床試験は期間が遅れがちと言われていますが、弊社のデータを用いると、「どこにどのような症状のある患者さんがどの程度のボリュームいるか」を把握することができます。 すると治験を行う上で、治験実施施設の選定や、患者さんのリクルーティングにおいても、かなり効率化が見込めると感じています。

今、研究開発の観点でお話しをしましたが、これは営業やマーケティング側も同じです。 営業・マーケティング側で一番シンプルな使い方としては、トリートメントフローです。

ある疾患において第1選択では、どのような薬が使われていて、第2選択ではどのような選択が見込めるといったトリートメントフローが定量的に追えるので自社の薬剤がその中でどういう立ち位置にいて、どのぐらいスイッチし、どのぐらいドロップしているかが見えます。

最近よく言われる「患者中心の医療」という文脈でも、我々のデータは患者さんのデータベースなので、個々の患者さんがどういう受診行動をとり、いかに治療を受けてきたかといういわゆる「ペイシェントジャーニー」と呼ばれるものがつぶさに見られます。

細かく見ていくことによって、どこにペインポイントがあって、どこに薬剤以外の課題を感じるのかといったところを製薬の方々とは分析をしています。
デジぽち「毎年薬価改定の行方」05

沼田 なるほど。「幅広く研究開発からセールス、マーケティングまで」ということで、研究開発に関して製薬会社もリードタイムがかかったり、あるいは施設選定で課題があったりなど耳にすることがあります。こういうデータを使うことによって製薬会社側にも開発にかかるコストやリードタイムが改善される可能性があると感じました。

またセールスやマーケティングの世界でも、患者中心医療に向けた施策を打つ際に、データを見ながら患者さんの副作用や治療効果を見ていく、という具合でデータを有効活用できそうです。

一方で患者さんや医療従事者においては、医療の提供者側としてこういうデータを医療現場でいかに活用するのかが非常に重要な切り口だと思いますが、いかがでしょうか。
デジぽち「毎年薬価改定の行方」13

杉田 これは製薬ともかぶってきますが、患者さんの疫学的なデータを得ることによって、ある程度のエビデンスが作れていくので、今まで医師指導試験などでしっかりお金と時間をかけて作らざるをなかったエビデンスが、ある程度スピーディかつコンパクトにできるようになります。

先ほどお伝えしたような「この薬が効く群」が明らかになっていくと、ドクター側としても薬を使いやすくなるなど、少し一歩引いて医療の質という面でも役立っていると思います。

また例えば弊社のデータを見ると、全国的には「どういう薬剤がどれぐらいのシェアで使われているか」が見えてきます。 それぞれの病院も同じで、この病院においてはこういう薬剤がこのぐらいのシェアで使われているとわかった時にその治療の質が、ある程度標準化ができる可能性があります。

近医は「新しいバイオの薬の割合が少ない」とわかった場合には「ガイドラインからは、やや遅れをとっているかもしれない」というように、治療の品質を底上げする効果が見込めます。

さらにもう一歩引いて病院経営に関連した活用例のお話をします。ある地域に呼吸器疾患、例えば喘息や間質性肺炎の患者さんがそれぞれどの程度存在するか判明したとします。近隣にある特定の病院にはほとんど間質性肺炎の患者さんが来ておらず、喘息やウイルス性肺炎の方ばかりだった。こういう場合に、その病院は自院の強み弱みを見つめ直し、強みを発揮できる領域にフォーカスができるようになります。すると強みに特化した医療機関として医療の質が上がっていく流れができます。

このように、多少のレベル感は違えどリアルワールドデータが寄与できる領域はあると感じています。

 

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【トレンド】データの価値を最大限に発揮するための取り組みとは?~JMDC杉田COOインタビュー~【3/3】

 
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本記事は日本最大級の製薬・医療業界特化型動画サイト「デジぽち」で2022年8月より公開している動画のテキスト版です。内容は当時のものとなりますのでご了承ください。

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